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 全国の自治体が2021年4月12日に始める新型コロナワクチン接種の準備が佳境に入っている。安全な接種をスムーズに進めるために政府が開発したのが「ワクチン接種記録システム(VRS)」だ。政府や自治体が国内に住む住民の接種状況をリアルタイムに把握するため、スムーズな入力やID管理などに工夫を凝らす。

初期設定済みのタブレット端末で入力しやすく

 「3秒で入力できる」――。河野太郎規制改革相は2021年4月6日、政府が自治体や医療機関に配布するタブレット端末を使って接種記録のデータをVRSへ入力するデモンストレーションを実施し、入力の手軽さをアピールした。

河野太郎規制改革相はタブレット端末で接種券を読み取るデモンストレーションを実施した
河野太郎規制改革相はタブレット端末で接種券を読み取るデモンストレーションを実施した
撮影:日経クロステック
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 VRSは、市区町村が住民1人ひとりの接種状況を正確かつ迅速に把握するために、政府が開発したシステムだ。自治体の接種会場や医療機関の職員は住民が接種を受ける際、タブレット端末を使って接種情報を読み取り入力する。

 新型コロナワクチン接種は予防接種法に基づいて各自治体が実施する。各自治体は従来の予防接種でも住民の接種記録をデータ化し、予防接種台帳で管理してきた。転居などの際に他の自治体が接種記録を確認できる仕組みは今でもあるが、データの反映に数カ月かかる。

 特に新型コロナワクチンは短期間に2回接種するため、従来の仕組みでは住民が転居して自治体を転出すると、データ反映の遅れにより接種状況の把握が難しくなる。災害時や様々な問い合わせへの対応が困難となる懸念があった。

 そこで、小林史明内閣府大臣補佐官が主導し、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室(以下、IT室)のメンバーらが新たなシステムの検討を進めてきた。医療スタートアップのミラボが開発と保守を請け負い、Amazon Web Services(AWS)上に構築した。

ワクチン接種の全体フローとその中でVRSを活用する部分
ワクチン接種の全体フローとその中でVRSを活用する部分
出所:内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室
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 市区町村は原則2021年4月5日までにそれぞれが保有する住民基本台帳や予防接種台帳のシステムから接種対象者の氏名やマイナンバーなどをCSVファイル形式で抽出し、VRSの自治体ごとに区分された領域に保存する。住民1人ひとりを正確に特定するためにマイナンバー法の例外規定を初めて適用し、マイナンバーを含む個人情報(特定個人情報)を他の自治体へ提供する。住民の転出先である自治体は住民の接種券などで接種履歴を確認できない場合でも、住民の同意を得てマイナンバーで照会できる。

 VRSのフル活用には、自治体や医療機関でのスムーズなデータ入力が肝となる。そこで政府は、入力専用のタブレット端末を自治体の接種会場や医療機関に配布する。

 自治体の接種会場や医療機関は、職員がタブレット端末のカメラを使い、接種券にある接種情報を記録した番号「OCRライン」などを読み取り、インターネット経由でシステムに自動入力する。タブレット端末はNTTドコモなどが用意するシャープ製とレノボ製のAndroid端末で、3月末までに4万1000台、6月末までに追加で1万台を確保する。これまでに約99%の自治体から計3万台の要望があり、IT室が順次送付している。タブレット端末の配布は、集団接種会場では複数のケースもあるが、医療機関では1施設1端末となる。

 タブレット端末での入力は、普段ITになじみが薄い職員でも容易に扱えるように工夫を凝らした。まず、LTE通信機能付きのタブレット端末が初期設定済みのすぐに使える状態で接種会場や医療機関に届く。ログイン画面でIDとパスワードを入力し、設定画面からワクチンの種類と会場名を登録すると、接種券の読み取り画面になる。読み取り開始のマークをタップすると、約3秒でカメラが認識してOCRラインの番号などを読み取り、自動入力する。

接種券の上にタブレット端末をかざし、「読み取り開始」をタップする
接種券の上にタブレット端末をかざし、「読み取り開始」をタップする
撮影:日経クロステック
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約3秒でOCRラインの番号などを読み取る
約3秒でOCRラインの番号などを読み取る
撮影:日経クロステック
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