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 建機大手のコマツは2021年2月中旬から、契約書の作成業務にAI(人工知能)を導入した。過去の契約書をデータベース化しAIによる自然言語処理で分析することで、調査や文案作成にかかる業務を効率化。法務部門で7割近い生産性の向上にめどをつけた。

 生産性を高めた最大のポイントは、過去条項の傾向を統計化したり参照しやすくしたりすることで、契約書作成の前工程である過去事例の調査や情報収集にかかる業務時間を従来の約5分の1と大きく短縮できるめどをつけたことだ。契約書作成の全工程でも業務時間を約4割削減できる効果が期待できるという。生産性では1.67倍の向上に相当する。

 業務時間の削減効果は、2020年2月から同年8月にかけて数十の契約書作成をサンプルに実施した実証実験で導いた。2021年2月からの本番導入の効果は今後測定する予定だが、導入を指揮した法務部の千賀敏照法務担当部長は「本番導入でも同等の生産性向上の手応えを感じている」と語る。

コマツが実施した契約書作成の実証実験におけるAI導入効果。全体では4割の業務時間削減が可能との結果を得た
コマツが実施した契約書作成の実証実験におけるAI導入効果。全体では4割の業務時間削減が可能との結果を得た
出所:コマツ、MNTSQ
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 契約文書は決まった語句が頻出するなど自然言語処理での解析に向く性質がある。コマツの導入事例は、法務スタッフの生産性を高める補助的な使い方ならば、契約や法務におけるAI活用は既に高い実用レベルにあることを示していると言えそうだ。

過去の膨大な条項から傾向をつかむ

 コマツが構築した契約書のデータベースでは、法務向けAIを開発するMNTSQ(モンテスキュー)が開発したクラウドサービス「MNTSQ for Enterprise」を活用した。

 MNTSQ for Enterpriseの特徴は、契約書に出てくる語句をAIによる自然言語処理で解析することで、契約書の条項を分類するタグ付けを自動で行うことだ。例えば「損害賠償」や「機密保持」などのタグを用いて過去にある同類の条項を参照しやすくする。

 同類の条項をタグで参照するだけでなく、条項に含まれる語句からその内容の傾向も分析できるという。例えば過去の契約書にある損害賠償の条項は、賠償の範囲や金額を明示的に限定しているか、その割合がどれだけあるかなどを統計グラフなどで確認できる。

 コマツは同サービスを用いて2006年からの約7万6000件の契約書をデータベース化した。従来の契約書データベースはグループウエアの機能を用いて構築していたが、年代ごとなどで3つに分かれ、紙の契約書をスキャンした画像も多く含まれていた。過去の契約書は極めて検索、参照しにくかったという。コマツは今回のデータベース化を機に、画像で保存していた契約書もOCR(光学的文字認識)でテキスト化して全内容を分析できるようにした。