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 カーボンニュートラルに貢献できるとして注目を集める「水素」技術。その1つが、三菱パワー(横浜市)が開発・製造を手掛ける、水素を燃料とした火力発電用のガスタービンだ。

三菱パワー高砂工場(兵庫県高砂市)で組み立て中のガスタービン
三菱パワー高砂工場(兵庫県高砂市)で組み立て中のガスタービン
(出所:三菱パワー)
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 同社は、発電所で用いる出力10万kW級以上のガスタービン開発では、米General Electric(ゼネラル・エレクトリック、GE)やドイツSiemens(シーメンス)と競合する世界3強の1つだ。2018年には天然ガスに30%の水素を混合して燃焼させる「予混合燃焼」(DLN)式のガスタービンを実用化(実圧燃焼試験を完了)。25年には水素だけを燃焼させる「水素専焼ガスタービン」の実用化を目指す。

 日経クロステックは21年3月25日、同社高砂工場内の組み立て工場や総合研究所、20年7月に長期実証運転を始めたばかりの実証設備複合サイクル発電所(通称:第二T地点)などを見学。併せて、同社が取り組む水素ガスタービンの開発状況などについて取材した。

三菱パワー高砂工場の全景
三菱パワー高砂工場の全景
(出所:三菱パワー)
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世界トップクラスの発電効率

 高砂工場は、火力発電所で用いるガスタービンの製造拠点。同社によると、研究・開発から設計、製造、実証まで同一敷地内で賄う工場は世界唯一だという。

実証設備複合サイクル発電所第2号発電設備(通称:第二T地点)の全景
実証設備複合サイクル発電所第2号発電設備(通称:第二T地点)の全景
(出所:三菱パワー)
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 同工場構内に建設された第二T地点は、次世代高効率ガスタービンと、新開発の高効率蒸気タービンを組み合わせた、出力56.6万kWの最新鋭ガスタービン・コンバインド・サイクル(GTCC)発電設備だ。20年7月に発電プラントとしての機能確認などを終え、周辺地域の電力網に接続して実際の火力発電所と同様に運用しつつ、長期的な信頼性を検証している。