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 高齢者への新型コロナウイルスワクチン接種開始に伴い、2021年4月12日から政府の「ワクチン接種記録システム(VRS)」が稼働した。国が接種状況の進捗を正確かつ迅速に把握するためのシステムである。

 医療機関は政府から配布されたタブレットでVRSにログインする。その際、「新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(G-MIS)」のIDを使用する。こちらは全国の各医療機関の稼働状況や病床などの状況に加え、体外式膜型人工肺(ECMO=エクモ)などの医療機器、マスクや防護服といった医療資材の確保状況などを一元的に把握できるシステムである。

 IDを共通にした理由は、新型コロナ関連で複数システムが存在しているため、医療関係者から「ID管理が大変なので簡素化してほしい」という要望を受けたからだ。今後、G-MISのID統合管理機能を、ワクチンの配送と接種状況を管理する「ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)」や、新型コロナ感染者の情報を集約する「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)」にも使えるようにする考えだ。

将来的な各システムのID連携のイメージ
将来的な各システムのID連携のイメージ
(出所:内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室)
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G-MIS再構築で、情報一元化のプラットフォームに

 なぜG-MISは乱立する新型コロナ関連システムのIDを統合できる機能を備えているのか。鍵はG-MISの再構築にある。

 そもそもG-MISは新型コロナ対策として急ぎ厚生労働省が2020年3月末に試験稼働させ、2020年5月1日に本稼働させたシステムだ。サイボウズのクラウド型プラットフォーム「kintone」をベースに開発した。

 これを厚労省は2021年1月18日に新システムに移行させた。2020年度第2次補正予算でG-MISの改修などに29億円を計上し、同年11月から新システムの構築を開始。基盤はkintoneから米salesforce.com(セールスフォース・ドットコム)のクラウドサービスに変更した。

2020年度第2次補正予算におけるG-MISの機能拡充
2020年度第2次補正予算におけるG-MISの機能拡充
(出所:厚生労働省)
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 「改修というより再構築に近い」。G-MISを担当していた厚労省の佐藤拓也医政局地域医療計画課主査(当時)はこう語る。

 新G-MISの改修コンセプトは「普段から医療機関などの各種情報を効率的かつ横断的に把握し、自治体、医療機関等とも情報共有できる調査のプラットフォームとすること」(佐藤氏)。新型コロナ対策向けの時限的なシステムではなく、収束後に他の緊急事態でも円滑に医療を提供できるシステムを目指した。