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 カシオ計算機が2021年4月23日に発売する腕時計「G-SHOCK」の新製品「GMW-B5000TR」には、同社が日本製鉄と6年かけて開発した新素材が使われている。「鏡面仕上げが可能なチタン合金」だ。軽さや耐食性などに優れたチタン(Ti)。これまでもTiを採用したG-SHOCKはあったが、コストや加工性の問題から、使っていたのはもっぱら純Ti(Ti含有率99%以上)だった。しかし、純Tiは鏡面に仕上げるのが難しい。鏡面仕上げで高級感を演出したい開発陣は歯がゆい思いをしていたという。

新チタン合金を使ったG-SHOCKの新製品「GMW-B5000TR」
新チタン合金を使ったG-SHOCKの新製品「GMW-B5000TR」
ベゼルとバントで使用したチタン合金は、高い鏡面性で仕上げられるのが最大の特徴。(写真:スタジオキャスパー)
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約100種類の材料を試作し鏡面性を1.5倍に

 GMW-B5000TRでは、ケース(ベゼル)とバンドに新開発のTi合金を採用している。表面に映る像の鮮明さを示す写像性の指標DOI(最大は100)が90近くと、従来の純Ti部品に比べて約1.5倍に高めた。この値は、ステンレス鋼製の部品と同レベルである。

 一般に、磨きの仕上げでは硬い素材ほど鏡面性を高められる。ところが、純TiはTi合金よりも軟らかく加工性に優れている半面、それ故に研磨すると微細な凹凸(ゆず肌)が生じたり、ピンホールができてしまったりと鏡面性を高めにくかった。硬度を上げるには、他の物質を添加する合金化が必要となるが、今度は加工性が悪い上に、コストも高くなり過ぎて採用できなかった。

 今回、両社は、鏡面性と加工性の両立を最大の目的として新しいTi合金を開発した。前述のように既存のステンレス鋼で実現している鏡面性を、量産品として加工できる物性を持つTi合金で実現する。そのため日本製鉄は、成分のバリエーションで約30種類、金属組織の違いも含めると約100種類の材料を試作し、鏡面性と加工性を両立できるかどうかを検討した。