全2555文字
PR

 日本電産が、東欧のセルビアに電動車用モーターの新工場を設立する。モーターだけでなく、インバーターやECU(電子制御ユニット)などの量産工場も建設し、欧州市場を攻略する中核拠点とする計画だ。2021年9月に着工し、22年中ごろの完成を目指す。

 同社は今後10年ほどで欧州に2000億円を投じる計画。21年4月9日にオンライン記者会見を開いた社長の関潤氏によると、「2000億円のうち、多くの資金をセルビアに投入していく」という。

 セルビア北部のノヴィ・サド市に構える新拠点には、車載用モーターおよび関連製品を製造する日本電産の工場の他に、インバーターやECUを手掛ける日本電産エレシスをはじめとするグループ会社の拠点を設ける予定である。稼働当初の敷地面積は約10万m2で、従業員数は1200人。生産能力の拡大に合わせて敷地や人員を拡張していく。

 日本電産がセルビアの新拠点で狙うのは「第2のピンフを築く」(同氏)ことだ。ピンフは中国語の発音で、中国浙江省の平湖(ピンフ)市を指す。中国では、グループ12社の拠点を平湖地区に集約させることで、開発や生産、営業活動の効率を高めている。

日本電産社長の関潤氏
日本電産社長の関潤氏
2021年4月9日にセルビアの大統領府で進出計画を発表した。(出所:日本電産)
[画像のクリックで拡大表示]

 社長の関氏は記者との質疑応答の中で、欧州の中核拠点としてセルビアを選んだ理由や欧州の電気自動車(EV)市場の見通しなどを語った。主なやりとりは以下の通り。

セルビアを選んだ理由は。

 代表的なところで3つある。第1が就労人口の確保のしやすさだ。当社の車載事業では既に、ポーランドやハンガリーに工場を持っている。既存の拠点への機能集約を最初に検討したが、実は近隣からそれほど人が集まらない。

 セルビアには第2の平湖を築く計画で、将来的には1万人規模の就業人口の確保が必要になってくる。ポーランドやハンガリーではとても確保できない。ではどこか。検討した結果、セルビアという土地、特にハンガリーと接する北部のノヴィ・サド市が就業人口を確保しやすいことが分かった。

 2つ目はコミュニケーションの取りやすさ。東欧に進出する際に、特に難しいのが言語だ。当然、日本語を話せる人は限定的。そういう意味で、セルビアは英語が通じやすい。街中の売店でも英語でコミュニケーションできるほどだ。

 3つ目は、欧州連合(EU)への加盟を模索している点。まだ加盟していないが、2027~28年ごろに加盟するのではと予測する声が多い。加盟すると注目度が高まるので、多くの企業が集まってくる。どうせ進出するならEU加盟前に行った方がいい。その方が大切にしてもらえる可能性が高い。

日本電産がセルビアに構える新工場の完成予想図
日本電産がセルビアに構える新工場の完成予想図
2021年9月に着工し、22年中ごろの完成を目指す。(出所:日本電産)
[画像のクリックで拡大表示]

セルビア新工場の設立を含め、欧州の電気自動車(EV)市場をどう攻めていくか。

 当社の車載事業は既に、欧州では3000億円ほどの売上高を確保している。欧州Stellantis(ステランティス)とトラクションモーター(駆動用モーターとインバーター、減速機を一体化した電動駆動システム「E-Axle(イーアクスル)」)を設計・生産する合弁会社を設立済みだ。

 E-Axleの最初の数モデルは(ステランティス傘下の)フランスGroupe PSA(グループPSA)の工場内で、22年から23年に生産を開始できるように準備中だ。それに続く形で、セルビアの新工場で新しい顧客、あるいはステランティス向け事業の拡大を図っていく。