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内部の空洞表面を起点に疲労破壊が発生

 疲労破壊とみられる痕跡があったファンブレードはファンハブから取り外し、P & Wの冶金研究所に送られ、NTSBの上級冶金学者が詳細な検査を行った。

 走査型電子顕微鏡(SEM)による検査の結果、ファンブレード内の空洞の表面を起点として複数の疲労破壊が発生していることが確認された(図5)。疲労破壊が最初に始まった箇所の特定や傷あとの数の把握など詳細な分析は進行中だ。

図5 ファンブレード破断面の拡大写真
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図5 ファンブレード破断面の拡大写真
走査型電子顕微鏡(SEM)による検査の結果、空洞の内面を起点とする疲労破壊が確認された。(出所:NTSB)

 蛍光浸透探傷検査では、疲労破壊の起点から2.5cm(1インチ)以内に複数の2次クラックの兆候が発見され、SEM検査で潜在的な2次クラックだったと結論付けた。2次クラックの大きさと深さを確認するための追加作業が行われている。NTSBの冶金グループは、破断面付近の化学組成と微細構造も分析する予定だ。

ファンブレードの検査サイクルを短く

 事故を受けてP & Wは対策に乗り出した。21年2月22日に特別指示書を発行し、ファンブレードについて熱音響画像(TAI)検査の間隔を従来の6500回の離着陸(サイクル)から1000回に修正した。21年2月23日には連邦航空局(FAA)が緊急耐空性命令を出した。P&W製のPW4077および同様の型式(PW4000シリーズ)のエンジンの所有者および運航者に対して今後、飛行前にTAI検査を実施し、ファンブレードに亀裂がないか検査することを求めた。不合格だったファンブレードは交換することを指示している。

 なお、事故機で金属疲労とみられる亀裂が発生したファンブレードの保守点検データを確認したところ、前回の点検から2979サイクルが経過していた。今後、過去の検査記録を確認して破壊の開始点付近のTAIデータに異常がないか調べる。

2020年末那覇空港での事故と類似性

 P&WのPW4000シリーズのエンジンは過去にも度々トラブルを起こしている。05年には全日本空輸や日本航空のボーイング777型機が搭載している同シリーズのエンジンのタービンブレードが相次いで折損した。ブレードの製造時のミスで硫化腐食が起きたことが原因だった。16年にも大韓航空が運航するボーイング777-300型に使用したエンジンの高圧タービンのローターが部品の加工ミスにより破断した。

 今回のユナイテッド航空機の事故との関連性の高さでは、20年12月4日に発生した日本航空904便(那覇発羽田行き)の事故が注目できる。那覇空港の北約100km付近で左側エンジンの不具合を認めて同空港に引き返した。機体はPW4000シリーズを搭載したボーイング777型機だった。運輸安全委員会が到着後に実施した点検では、ユナイテッド航空の事故機と似たようなファンブレードの損傷状況が確認されている(図6)。

図6 破損していたJAL904便の左エンジン
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図6 破損していたJAL904便の左エンジン
ファンブレードの2枚が破損していた。1枚は根元から、1枚は中程から破断している。根元から破断していたファンブレードには疲労破壊の特徴が認められた。(出所:運輸安全委員会)

 国土交通省は21年2月21日、ユナイテッド航空の事故を受け、安全対策を検討する間、同シリーズのエンジンを搭載する日本航空の13機と全日本空輸の19機を運航停止するよう指示した。これまでは点検強化の指示にとどまっていた。日本航空は4月5日、運航停止中だったボーイング777型機を3月末で退役させたと発表した。運航再開の時期が見通せず、維持費などを考慮して一部の機体は退役時期を1年前倒しした。

 運輸安全委員会とNTSBは今後、基本的にそれぞれ独自に事故調査を進めていく。「もし調査を進めるなかで参考になる情報があれば連携する可能性はあるが、今のところ連携の予定はない」(運輸安全委員会の広報室)。中空構造のチタン合金製ファンブレードで相次いで発生した損傷事故。確実な原因究明と再発防止を早期に実現するためにも、両調査機関を含めた関係各者の情報共有と連携の強化を期待したい。