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 成田国際空港会社(NAA)は2021年4月13日、国際線の搭乗関連の各種手続きを顔認証でできる「Face Express(フェイスエクスプレス)」の実証実験を成田空港で開始し、その模様を報道陣に公開した。Face Expressを利用すれば手続きで航空券やパスポートを出す回数を減らし、「顔パス」に近い形で飛行機に搭乗できる。同年7月にも本格運用へ移行する計画だ。

 2019年5月に導入を発表したFace Expressは2020年春の稼働を予定していたが、コロナ禍で海外技術者の渡航が難しくなったことなどから、延期を余儀なくされた。顔認証を含むFace Expressシステムの開発に際しNAAは、NECと随意契約している。当初は約18億6千万円としていた契約料は、2度の契約変更を経て23億6千万円に膨れ上がった。だがNAAの宮本秀晴上席執行役員経営企画部門副部門長は「狙い通りの(品質の)ものができそうだ」と自信を見せる。2年間の開発でどのような成果が上がったのだろうか。

五輪での活躍失われるも、非接触ニーズで本領発揮

 Face Expressは搭乗者が国際線搭乗までに通る「チェックポイント」を、顔認証技術でスムーズにする仕組みだ。国際線搭乗の際は「自動チェックイン機」「自動手荷物預け機」「保安検査場入り口ゲート」「出国審査カウンター」「搭乗ゲート」の順に、大きく分けて5カ所のチェックポイントを通る。

 最初の自動チェックイン機でパスポートや搭乗券と共に顔情報を登録すれば、以降の4カ所のうち出国審査を除く3カ所で、設置されたカメラによる顔認証を利用可能になり、書類の提示が不要になる。Face Expressでは自動チェックイン機で本人の同意のもと、取得した顔の画像データを成田空港のオンプレミスの認証サーバーに保管し、各チェックポイントで本人確認に使う。搭乗者のプライバシーに配慮し、Face Expressに登録した顔画像やパスポートなどのデータは登録後24時間以内に削除する運用としているほか、Face Expressを利用せず従来通り各チェックポイントでパスポートと紙の搭乗券を提示する搭乗方法も選択できる。

自動チェックイン機で顔写真を登録する様子
自動チェックイン機で顔写真を登録する様子
(撮影:日経クロステック)
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 NAAは2019年の導入発表当初、東京オリンピック・パラリンピックで多くの外国人が訪日することを見越し、彼らの出国手続きにFace Expressを使うことでスムーズに誘導することを期待していた。そうした当初の狙いは、新型コロナウイルス禍による渡航制限やオリンピック・パラリンピックの延期、外国人観客の受け入れ断念により失われた。

 それでも顔認証のシステムは新型コロナウイルス感染症が流行する状況下、感染拡大を防ぐ非接触のニーズにマッチし、本領を発揮できる機会を得た。従来の各チェックポイントでは搭乗者がマスクを外し、空港スタッフの確認を受ける必要があった。Face Expressの導入により、確認時にスタッフと対面する機会を減らし、接触による感染リスク抑制を見込める。

 NAAはFace Expressでオリンピック・パラリンピックの機会に限らず、搭乗手続きのスループット(処理能力)が向上することを期待する。NECは自社の顔認証システムについて認証時間の短さをアピールしている。成田空港に導入したシステムでも、保安検査場の入り口では搭乗者が歩いてゲートに接近すれば即座にゲートが開き、立ち止まる必要がないことを報道陣に披露した。

 搭乗口の顔認証ゲートでは保安検査場入り口より認証時間が長く、報道陣向けのデモでは搭乗者がゲートで1~2秒ほど立ち止まっていた。これは「顔認証情報に加え、航空会社のチェックインシステムとの間で搭乗券データを照合するトランザクションが発生し、そのやり取りに時間がかかるため」(NAAの松本英久経営企画部門経営計画部戦略企画室マネージャー)だ。