全2363文字
PR

 NTTデータがFinTechベンチャーのDatachain(データチェイン、東京・港)と組み、貿易管理のブロックチェーンの実用化に動き出した。異種ブロックチェーンの相互運用ミドルウエアを使い、ブロックチェーンで貿易の実務をこなす上で課題となる「トリレンマ」を解決するめどを付けた。地に足の付いたブロックチェーンの用途開拓は進むのか。

 「貿易業務は紙を使った伝言ゲーム。膨大な手間と手数料がかかっている」。NTTデータの世取山進二金融事業推進部デジタル戦略推進部ブロックチェーンチーム課長は、現状の貿易業務の問題点をこう指摘する。現在は銀行が貿易業務の仲介者を担うケースが多い。国をまたいだ不特定多数の企業や団体について、信用や交換する書類の完全性を保証するためだ。船荷証券や保険関連、売買契約など、やり取りする書類も多岐にわたる。リスクプレミアムとして高額な手数料がかかっているという。

 NTTデータはブロックチェーンを使えば貿易業務を大幅に効率化できるとみる。分散型台帳であるブロックチェーンで書類を電子データとして共有したり業務プロセスを実行したりすれば、「モノと価値を同時に移転できるようになる」(世取山課長)。銀行など特定の仲介者が不要になるため手数料も削減でき、貿易への参加者増も期待できるという。

貿易業務に伴う事務作業の概要
貿易業務に伴う事務作業の概要
(出所:NTTデータ)
[画像のクリックで拡大表示]

 世取山課長は、貿易業務へのブロックチェーン活用を実現するために、3つの要件を同時に満たす必要があると指摘する。第一は一連のトランザクションの自動実行。貿易参加企業の担当者による操作を介さず、スマートコントラクトにより取引処理を自動実行できる機能だ。

 異なる種類のブロックチェーンを横断したデータ交換や業務プロセス実行を可能にする必要もある。これが第二の要件だ。船荷証券などの書類と取引に使う暗号資産(仮想通貨)が異なるブロックチェーンで管理されているなど、異種混在環境でも貿易業務を可能にする。

 第三は電子署名に必要な秘密鍵をクライアント、すなわち貿易参加者の企業や団体が管理すること。銀行など中央の存在なしに、貿易参加者自身が資産を管理し内容を保証できる必要がある。

 これらの要件はいわば三すくみの関係にあり、2つの要件を満たすと残る1つを満たせなくなる恐れがあるという。例えば第一の要件であるトランザクションの自動実行と第二の要件である異種ブロックチェーンを横断した処理を満たそうとすると、電子化した書類の改ざん防止などのため電子署名をあらかじめ付加しておく必要がある。

 現在の一般的な公開鍵暗号方式は、電子署名に使う秘密鍵をサーバーサイドで管理する。貿易業務で言うと銀行などの仲介者だ。これではブロックチェーンの特徴である分散処理を実現できない。貿易管理サービスの運営者が電子署名を代行し自動実行することも可能だが、秘密鍵を保有して取引を管理するには仮想通貨交換業の取得が必要になる可能性があり、サービス運営者にとって大きな負担になる。