全3331文字

 再生可能エネルギーと電動モビリティーの普及による需要を見越し、東芝が開発により一層力を入れているのがリチウムイオン2次電池「SCiB」だ。負極材料にチタン酸リチウム(LTO)を採用し、安全性を高めたのが大きな特徴。一般的なリチウムイオン2次電池には発火リスクがあるのに対し、SCiBは自身が原因となって燃える恐れが限りなく小さい。

SCiB
[画像のクリックで拡大表示]
SCiB
リチウムイオン2次電池では珍しくチタン酸リチウム(LTO)を負極に採用。安全性や急速充電、寿命といった性能を伸ばした。(出所:東芝)

 リチウムイオン2次電池の負極には炭素材料を使う場合が多く、SCiBのようにLTOを採用する例は珍しい。一方で、正極や電解液には、他のリチウムイオン2次電池と同様の材料を使用する。

 負極にLTOを使うことで、内部短絡が起点で生じる急激な発熱・発火を招く現象を発生しにくくし、異常時の信頼性を大幅に高めた。最大の利点であるこの①高信頼(安全性)の他にも、LTOの採用は、②3分間で全容量の80%を充電(急速充電)できる高入出力や、③2万回充放電しても90%の容量維持率を保てる長寿命といった特徴をもたらした。

電動バスの電池を8割以上軽量化

 すなわち、SCiBは安全性にも急速充電にも寿命にも優れることから、モビリティー用電池として有望視されているというわけだ。中でも、欧州やロシアなどで実用化している「パンタグラフ方式」と呼ばれる電動バスの急速充電システムはその特徴が生きる。この急速充電システムでは、停車したバス停で数秒~数十秒間、パンタグラフを介した給電によってバスに搭載したSCiBに急速充電する。こまめに充電するため電池の搭載量が少なくて済み、乗客スペースの拡大と燃費・運用コストの低減が見込める。実際、SCiBを利用したパンタグラフ方式の急速充電システムの質量は450kgで済む。これに対し、充電回数を1日1回行うSCiBを使わない通常の充電システムでは2.5t(トン)もの電池をバスに搭載する必要がある。

SCiBを使った電動バスの利点
[画像のクリックで拡大表示]
SCiBを使った電動バスの利点
SCiBを使用したパンタグラフ方式の急速充電システムを搭載した電動バスは、電池の搭載量を大幅に削減できる。欧州やロシアで実用化されている。(出所:東芝)

 SCiBは簡易ハイブリッドシステム(マイルドハイブリッドシステム)にも向く。既に、スズキのマイルドハイブリッド車(HEV)や、日産自動車の「デイズ」のマイルドHEVなどがSCiBを搭載している。「SCiBの安全性・信頼性の高さが評価された」と東芝電池事業部電池システム技師長の稲垣浩貴氏は胸を張る。

 SCiBは作動可能温度も-30~60度と広く、寒暖差の激しい地域でも使うことができる。これに対し、一般的なリチウムイオン2次電池の作動可能温度は-20~55度と比較的狭く、例えば寒冷地では作動しにくいといった問題がある。

SCiBと一般的なリチウムイオン2次電池の性能比較
[画像のクリックで拡大表示]
SCiBと一般的なリチウムイオン2次電池の性能比較
SCiBのサイクル寿命は一般的なリチウムイオン2次電池よりも4倍程度長い。ただし、セル電圧やエネルギー密度は比較的低い。(出所:東芝)