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 日本郵便が2021年4月から郵便・物流事業を対象とした基幹業務システム刷新プロジェクトに本格着手したことが、日経クロステックの取材で分かった。同月から新システムの主要部分の要件定義に入り、2024年春ごろの稼働を目指す。

 同プロジェクトでは、宅配便(ゆうパック)や書留郵便など、荷物追跡を伴う信書・荷物の扱いに関わる基幹業務システムを全面刷新する。配達員用の携帯端末は専用端末から汎用のスマートフォンに切り替える。アプリ更新を容易にすると共に、内蔵のGPS(全地球測位システム)機能から得た位置情報を配達ルートの見直しなどに役立てる。

日本郵便の鈴木義伯専務執行役員CIO
日本郵便の鈴木義伯専務執行役員CIO
(出所:日経クロステック)
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 総投資額は未公表だが、2012年に日本郵便が発足して以来最大級のシステム投資プロジェクトになる。

 最大の特徴は「データ駆動型事業への変革」を目指す点だ。プロジェクトを指揮する鈴木義伯専務執行役員CIO(最高情報責任者)は「従来は全国の郵便局や配達員の間でデータが十分に共有されていなかった。荷物が動かないとデータが更新されず、活用しにくかった。これを改め、データを配達の効率化や付加価値向上に生かす」と説明する。

物とデータの時間差を生かす

 差出人が荷物を出してから受取人に届くまで通常は1日程度かかる。物の動き自体をこれ以上速めるのは難しいが、データの共有ならすぐにできる。荷物を差し出した時点で受取人は確定し、どの経路で運ぶべきか、同じ経路の荷物量はどの程度かなどはデータとして処理できる。

システム刷新後に目指す事業モデル。データと荷物の流れの時間差を生かして業務を最適化する
システム刷新後に目指す事業モデル。データと荷物の流れの時間差を生かして業務を最適化する
(出所:日本郵便「P-DX通信」Vol.02)
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 従来のシステムではデータが分断されており、荷物が配達担当郵便局に届くまで受取人のデータが分からなかった。新システムではこのデータを郵便局間で瞬時に共有し、実際に荷物が動くのにかかる1日程度の時間差を使って、配達経路の決定や配達員の手配などを先行させる。

 従来は配達員は郵便局に出勤し、経験と勘も交えて地図を見ながら担当エリアの配達経路を考え、荷物を取り出しやすい並べ方でトラックやバイクに積み込んでから配達に出かけていた。この準備に数十分かかるうえに、受取人が不在のために持ち帰らざるを得ないことも多い。