開発・生産コストの増加を抑えながら、どこまでボディーの性能を高められるか──。これが、現在の電気自動車(EV)ボディー開発の重点課題である。マツダが2021年1月に日本で発売した多目的スポーツ車(SUV)タイプの新型EVは、複数のパワートレーンに対応できる新プラットフォームを活用してコスト増加を抑えながら、骨格の強度と剛性を高めた。
世界の自動車メーカーは現在、「カーボンニュートラル(炭素中立)」などに対応するため、EVの開発を加速させている。ただ現時点でEVは、多くの販売が見込みにくい。例えば、日産自動車の現行EV「リーフ」のグローバル累計販売台数は、初代の発売から10年後の20年12月に50万台となったが、単純平均するとグローバルの年間販売台数は5万台にとどまる注1)。
ホンダが20年夏に欧州で、同年10月に日本で発売した新型EV「Honda e」の日本における年間販売計画は1000台。最も売れている同社の小型車「フィット」の100分の1にすぎない注2)。
販売台数の少ないEVを効率的に造る
マツダの新型EV「MX-30 EV MODEL(以下、EVモデル)」も、日本における年間販売計画はわずか500台である(図1)。同社の車種で最も売れている小型車「マツダ2」の50分の1程度だ注3)。
このように、現時点で生産台数が少ないEV向けに、多くのコストをかけて専用プラットフォーム(PF)を開発するのは難しい。そこで日産はリーフの現行車に、先代車のPFを流用した。同PFは小型ガソリン車向けPFを改良したものである。
一方、ホンダは小型EV専用のPFを開発し、Honda eに適用した。同車は将来のEVをリードする性能や装備、快適性を提示した「ショーケース」の位置付けとなる車両である。そのため、ガソリン車のPFを改良するのではなく、専用PFを開発して適用した。