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 Zホールディングス(ZHD)による、子会社や孫会社まで含む一元的な監督体制を整備し、経済安全保障も含めた責任者の設置をすべきだ――。LINEがLINEアプリ利用者の個人情報を海外拠点で扱っていた問題を受け、ZHDが設置した第三者委員会の提言に向けた議論が進んでいる。2021年4月末にも、検証や提言の中間報告を取りまとめて公表する計画だ。

LINEアプリは「社会インフラ」、高い水準が求められる

 第三者委員会「グローバルなデータガバナンスに関する特別委員会」の目的は、セキュリティーやガバナンスの観点からLINEの個人データの取り扱いを検証・評価すること。さらに検証結果を踏まえ、LINEのデータガバナンスのあり方を提言することだ。

 2021年3月23日に第1回、4月13日に第2回の会合を開いたほか、4月28日までに4回の技術検証部会を開催する。4月末に中間報告を予定しているが、その後も検証を続け「検証結果や提言は順次公表する」(座長を務める東京大学大学院の宍戸常寿教授)としている。

第1回会合であいさつする、座長を務める東京大学大学院法学政治学研究科の宍戸常寿教授
第1回会合であいさつする、座長を務める東京大学大学院法学政治学研究科の宍戸常寿教授
撮影:日経クロステック
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 第2回会合では、LINEの今後の対応への提言として、ZHDによる、子会社や孫会社まで含めた一元的な監督体制の整備を求めることを議論した。その背景には、今回のLINE問題について第三者委員会が行った調査の経緯がある。「『こういう情報を出してください』とLINEに依頼しても、調査すべき内容が大量で複雑であることもあり、すぐには出てこない。データの取り扱いの全体像や、誰がいつどのような権限で判断しているのか、その適切性を直ちに評価できるような状況ではなかった」と宍戸座長は説明する。

 LINEアプリは約8400万人が利用し「社会インフラと言える」(宍戸座長)レベルで広く普及している。そうしたLINEアプリについて「透明性など社会の要求基準が上がっている中で信頼を得るには、より高い水準が求められる」(同)として、上述の曖昧な管理体制をZHD主導の一元的な監督体制に改めるよう求める。

経済安全保障に配慮したデータガバナンスを議論

 第2回会合では他にも提言に向けた議論を展開した。具体的には渉外、セキュリティー、経済安全保障という3つの観点について、主要なグループ各社に責任者を設置し、それぞれが連携する体制を整備することなどを議論している。

 初回会合で宍戸座長が「経済安全保障にも配慮して、プライバシーとセキュリティー保護のあり方、それらを実現するガバナンスのあり方についても提言を求められている」と述べるなど、第三者委員会は設置当初から経済安全保障という観点を強く意識して議論を続けている。「今回のLINE問題が大きくなっているのは、経済安全保障との関連が注目されているためで、そこを議論することは避けられない」(宍戸座長)

 経済安全保障を巡っては、米中をはじめとする各国が国家安全保障上の自国の優位性を確保するため、重要な技術やデータなどを得る動きを活発化させている。その半面、企業にとってはグローバル化が進む中で自社の事業領域を国内だけで閉じるのは難しい。特にLINEのように海外拠点や海外資本を持つ企業にとって、経済安全保障の問題に対するかじ取りは難しい。

 今回の問題を受けLINEは、現在韓国で保管しているLINEトークなどのデータを順次国内へ移転するとした。だが、データローカライゼーションを進めるだけでは必ずしも解決にはならない。第三者委員会は今回、LINE内部で渉外、セキュリティー、経済安全保障という3つの観点で誰がどのような責任を負うのかが曖昧で、情報共有もできていなかったと見ている。まずはそれぞれの責任者を明確にし、責任者同士がしっかり連携できる体制を整備させるのが提言の狙いだ。