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 厚生労働省は新型コロナウイルス感染者数の全国統計の発表を、同省が開発した「HER-SYS」(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)を用いた集計へと段階的に移行させる。毎週木曜日に公表する週次での全国や都道府県別の感染者数を2021年4月8日からHER-SYSでの集計に切り替えた。日次では依然として人手を介した従来手法の集計を公式には採用しているが、HER-SYSによる集計数も併せて4月15日から公表を始めた。

 厚労省はHER-SYSが集めた感染者データの本格的な活用も始める。全国に約470ある保健所単位での感染者データを基に、10万人単位に換算した地域別の感染状況のデータを集計。2021年4月中にも国に感染対策を助言する厚労省の有識者会合へ提供し始める方針だ。市区町村の単位でまん延防止措置が必要かどうかの判断材料に活用するためだ。

厚生労働省が公表したHER-SYSに基づく日次の感染者データ。従来手法の集計と並べてグラフ化している。4月19日など日曜日の感染者数を集計した日でズレが大きい。
厚生労働省が公表したHER-SYSに基づく日次の感染者データ。従来手法の集計と並べてグラフ化している。4月19日など日曜日の感染者数を集計した日でズレが大きい。
出所:厚生労働省のサイト「データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報」
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 厚労省が紙とファクスでやり取りしていた新型コロナの発生届を効率化すべくHER-SYSの調達に着手したのは2020年3月末だった。システムを急造して2020年5月末にHER-SYSの運用を開始したものの様々な問題が頻発したため、データは長らく使い物にならず公表もされてこなかった。「紙よりも入力の負担が重い」と医師らの不評を買ったためデータ入力が進まなかっただけでなく、誤入力が多発するなどデータの信頼性も担保できなかったためだ。

 10カ月あまりの苦闘を経てようやく、HER-SYS本来の活用が始まった。その背景には実現性や緊急性を踏まえた機能の絞り込みや、現場の使いやすさを重視したシステム改善などがあった。厚労省はこの経験を反省材料として、今後の緊急時におけるシステム調達に生かす必要がある。

 HER-SYS集計に基づく新型コロナの感染者数は、同省が公開する特設サイト「データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報」で確認できる。

公表された2週分では、週次ではHER-SYSによる集計が従来手法よりも少ない傾向になっている
公表された2週分では、週次ではHER-SYSによる集計が従来手法よりも少ない傾向になっている
出所:厚生労働省のサイト「データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報」
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従来の集計とズレ、HER-SYSへの入力遅れが原因か

 ただし現状では、HER-SYSデータに基づいた新規陽性者の集計と、厚労省職員が全国の都道府県発表をWebサイト上で目視確認するという従来手法による新規陽性者の集計の数値が食い違っている。そのため特設サイトに掲載された新規陽性者数のグラフでは、HER-SYS集計による数値をピンクで従来手法の集計による数値を水色で表示し、違いが分かるようにしている。

 日次でも週次でもHER-SYS集計の方が従来手法の集計よりも少なくなる傾向が見られる。特に日曜日の感染者数を集計した月曜日の公表数は、HER-SYSによる集計数が従来手法による集計数よりも極端に少なくなる。感染者数で約1000人も差がついた2021年4月19日集計の数字が顕著だ。このズレこそがHER-SYSに残された課題だ。

 ズレる原因は2つ考えられる。1つ目は「自治体ごとに感染者数を集計・公表するタイミングがズレている」(HER-SYSを担当する新型コロナウイルス感染症対策推進本部保健班)ため。2つ目は一部の医療機関でHER-SYS導入が遅れており、保健所での代行入力に時間を要しているなどデータ入力が後回しになっている可能性があるからだ。