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 NTT東日本など14社はデジタル技術の専門知識を持つ人材として2021年度に計49人(4月13日現在)を40市町村に派遣する。政府の「デジタル専門人材派遣制度」に基づくもので、2020年度の21市町への派遣実績からほぼ2倍に増えた。派遣経験者に実情を聞いた。

 デジタル専門人材派遣制度は行政のデジタル化を進めるために協力企業が自治体に最長2年間、専門人材を派遣する国の制度だ。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局などが地方創生の人材を派遣している「地方創生人材支援制度」を拡充し、2020年度にデジタル専門人材派遣制度を新たに創設した。

 同制度にはNTT東日本やITbookなど22社(2020年11月時点)が協力企業として参画している。給与や報酬、常勤や非常勤といった待遇などは派遣元の企業と派遣先の市町村の協議で決める。任期付きで企業に所属しながら副業として週1~3日間を自治体の業務に当てたり、出向したりする。

「デジタル専門人材派遣制度」の概要
「デジタル専門人材派遣制度」の概要
(出所:内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局)
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デジタル専門人材の採用パターンは主に3つ

 滋賀県長浜市はデジタル戦略のマネジメントを担う「DXフェロー」を募集した。2021年3月25日に自治体向けシステム開発を手掛けるGcomホールディングスの小出篤地方行政経営研究所長に委嘱した。

 小出氏は委嘱式の30分後に開催した職員研修で、まず「行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)とは何かという説明から始めた」と話す。多くの自治体職員はDXの定義に登場する「ビジネスモデルの変革」という言葉になじみがないためだ。

 小出氏がDXの説明で挙げるのは、行政における既存のビジネスモデルだ。例えば行政窓口を担う市民課といった部署は、住民が役所に来て申請書を書いて押印し、対面で提出してもらって申請が成立するというビジネスモデルだった。それが多数の住民を相手に窓口で対応する際に最も合理的な方法だからだ。

 だがITを活用すれば、住民の申請を待たなくても制度の対象者に案内ができる。実際、千葉市は2021年1月から住民が使える支援制度などをLINEのプッシュ通知で知らせるサービスを始めた。小出氏が「ビジネスモデルの変革をITで実現すれば立派なDX」と説明すると、多くの自治体職員から「初めてDXの意味が分かった」と言われるという。

 小出氏によると、自治体が外部からデジタル専門人材を採用するパターンは主に3つある。1つ目は「非常駐型」で、外部の専門アドバイザーとして非常勤職で業務を担う。2つ目は「常駐型」で、常勤の副市町村長や部長、課長といったポストを与える。3つ目がDX専門の部署を新設して人材を集める「出島型」という。政令市など大規模な自治体に多い。

 長浜市も当初は派遣される専門人材に常勤職のポストを与える常駐型を検討していた。しかし小出氏は、「任期付きなので常駐型は人材のマッチングが難しい。進化のスピードが速いITの情報収集をしながら役所にフレッシュな発想を持ち込める非常駐型を推奨している」と話す。本来は自治体職員が自らDXを担う必要があるというのも理由だ。