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 内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室(以下IT室)は2021年3月末、政府の情報システムでアジャイル開発をうまく活用していくための「アジャイル開発実践ガイドブック」を公開した。

 政府のシステム開発を巡っては、新型コロナウイルス感染者の接触確認アプリ「COCOA(ココア)」や「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)」など、新型コロナ対策を中心にアジャイル開発が多く用いられているが、トラブルが多発している。同ガイドブックは「デジタル敗戦」とも言われる現状の政府システム開発を立て直す鍵となるか。

アジャイル開発、省庁職員が選択肢として持てるように

 同ガイドブックは、システム開発の知識や経験を持たない各省庁の職員にアジャイル開発を知ってもらうための「入門編」だ。同ガイドブックの作成を主導した政府CIO補佐官の市谷聡啓氏は狙いについて「各省庁の職員がシステム開発に当たって、アジャイル開発を選択肢として持てるようにすること」と話す。

 IT室がこれまで整備してきた、政府情報システム開発のための「標準ガイドライン群」の一環として作った。アジャイル開発に詳しい市谷氏を中心に2020年6月ごろから作成を進めた。民間企業で使われるアジャイル開発のガイドブック「スクラムガイド」などを参考にしつつ、政府の情報システム開発に合わせた内容にした。さらに、これまで各省庁で進めてきたアジャイル開発の事例をヒアリングし、「コラム」として紹介した。

 アジャイル開発実践ガイドブックはあくまでもアジャイル開発を選択肢の1つとして認識してもらうためのものだ。各省庁の職員が実際にアジャイルの手法を採り入れてシステム開発をしたいと考えたら、IT室に相談してもらう流れを想定しているという。

 ただ、IT室もアジャイル開発の実績が豊富にあるわけではない。2021年9月に設置予定のデジタル庁では、こうした開発に携わるIT人材を民間企業から登用するとしており、既に35人を採用した。同ガイドブックをうまく活用していくには、今後のデジタル庁の人材活用が鍵となりそうだ。