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 米Apple(アップル)の紛失防止タグ「AirTag」の発売で脚光を浴び始めた超広帯域無線通信技術「UWB(Ultra-Wide Band)」。今後、エレクトロニクス業界や自動車業界において、USB並みに広く浸透するインターフェースとなりそうだ。モバイル端末のOSでシェアを二分するアップルと米Google(グーグル)の両社が、UWB関連の業界団体「FiRa Consortium」に加わったからだ注1)

注1)アップル、グーグルの両社と後述する米Qualcomm(クアルコム)が、いつFiRa Consortiumに加入したかは不明である。ただし、2020年9月以降であることは確かだ。

 アップルは2019年から次々と自社製品にUWBを搭載している。一方グーグルは、21年8月に正式リリース予定の「Android 12」で、UWB用のAPI(Application Programming Interface)を用意し、サポートするもよう。Android端末で広く利用されている半導体部品を手掛ける米Qualcomm(クアルコム)も同団体に加わったことから、今後、Android端末でもUWBを搭載する動きが加速しそうだ。iOS端末とAndroid端末の両方で、UWBが標準搭載される日が近づいてきた。

FiRaのメンバーを紹介するWebページ
FiRaのメンバーを紹介するWebページ
(出所:FiRaのWebページをキャプチャーしたもの)
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 UWBは2000年代前半に脚光を浴びた無線技術である。当時はもっぱら1Gビット/秒の高速通信を実現する潜在力を秘めた技術として注目された。そのアプリケーションとして注目されたのが「Wireless USB」だ。ところが、無線LANの高速化やキラーアプリケーションの不在、電源の確保の必要性などによって普及には至らず、UWBは2010年代以降、民生分野ではほぼ見かけなくなった。一方で、UWBの持つ高い測位・測距精度を活用し、製造現場において人や工具、組み立てる製品などの位置を追跡するようなBtoB用途では使われ続けた。

 ところが、19年にアップルが発売したiPhone 11シリーズにUWBが採用されると潮目が変わり、民生用途で広がる兆しを見せ始めた。20年にアップルは、腕時計型端末「Apple Watch Series 6」やiPhone 12シリーズ、スマートスピーカー「HomePod mini」といった製品にUWB通信機能を搭載した。韓国Samsung Electronics(サムスン電子)といった競合も、Android端末にUWBを徐々に搭載し始めた。

 アップルをはじめ、UWBの採用に再び動き出したのは、BtoBと同じく高精度な測位・測距への期待からである。利用場所や方法に依存するものの、測距・測位精度を10cm前後まで高められる潜在力がある。測定時間も数ミリ秒と短い。いずれも、Bluetoothでは到達できない水準だ。加えて、日本を含めた各国での規制が緩和され、UWBの屋外利用が可能になった。用途を広げる上で不可欠なセキュリティー機能の強化も、UWB規格「IEEE802.15.4z」の仕様で盛り込まれるなど、利用環境が一気に整い始めた。

 それに前後して、業界団体の発足が相次いだ。このうち、UWBのユースケースや応用ごとの要求仕様、普及促進に向けたUWB製品間の相互接続性の確立を目指して19年に発足したのが冒頭のFiRa Consortium(以下、FiRa)である。UWBの仕様は標準化団体「IEEE」で策定されるものの、相互接続性まで担保しない。ユーザーにとって相互接続性は利便性向上のために必要で、UWB採用の機器やサービスを手掛ける企業にも市場拡大に不可欠なものだ。そこでFiRaでは、IEEE802.15.4zなどを基に相互接続性の向上を図ったPHY層とMAC層の仕様をそれぞれ20年に、FiRaメンバーに向けてリリースした。その時点では、20年末に、相互接続性の確保に向けた認証プログラムの仕様を確立するとしていた。

 ところが、21年4月時点で同仕様が策定されたとアナウンスされていない。FiRaメンバー限定でドラフト仕様がリリースされている可能性があるものの、まだ正式版は存在しないようだ。この認証プログラムでは、USBやHDMIのように、対応のコンプライアンス試験を通過したUWB製品に対して認証ロゴを付与することが決まっている。