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 古河電気工業と日亜化学工業は2021年4月26日、電動車両の基幹部品を加工する際に使う銅(Cu)の溶接技術で業務提携したと発表した(図1)。青色レーザーと近赤外レーザーという2種類のレーザー光を組み合わせた「ハイブリッド型」のレーザー溶接技術の開発を加速させる。ハイブリッド型レーザー溶接技術の実用化で先行する欧州や中国を追いかける。

図1 Cuのレーザー溶接技術で業務提携
図1 Cuのレーザー溶接技術で業務提携
古河電工社長の小林敬一氏(右)と日亜化学社長の小川裕義氏(左)が共同会見を開いた。(撮影:日経Automotive)
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 古河電工社長の小林敬一氏は「日本の技術でCu加工におけるデファクトスタンダード(事実上の標準)を狙う」と意気込む。電池やモーター、インバーターなど、電気自動車(EV)をはじめとする電動車両の基幹部品の多くはCu加工が必要(図2)。その製造コストの低減に向けて、「Cuをいかに効率よく溶接加工するかが大きな課題になってきた」(同氏)と指摘する。

図2 電動車両の基幹部品にはCu加工が必要
図2 電動車両の基幹部品にはCu加工が必要
モーターやインバーター、リチウムイオン電池などの生産時に、Cuをいかに効率よく溶接加工するかが大きな課題である。(出所:古河電工、日亜化学)
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 こうした課題を解決する技術として用意したのがハイブリッド型レーザー溶接で、古河電工は日亜化学と共同開発したレーザー発振器の第1弾「BRACE-I」を21年1月に製品化した。今後、製品ラインアップの拡充や性能向上を進めることで25年に関連製品の売上高で100億円を目指す。

 2種類のレーザー光を組み合わせるのは、加工の安定性や速度、品質などを高めるためである(図3)。近赤外レーザーを使った従来の溶接技術では、入熱が安定せず、あるしきい値で突然Cuの溶融が始まり、加工欠陥が発生することがあった。入熱が安定しないのは、1070nm帯の波長を使う近赤外レーザーの、Cuに対する光吸収率が約5%と低いからである。

図3 ハイブリッド型レーザー溶接の概要
図3 ハイブリッド型レーザー溶接の概要
青色レーザー光で広範囲にビームを当てて溶接する箇所を加熱し、輝度の高い近赤外レーザー光による加工を施す。(出所:古河電工、日亜化学)
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 波長が465nm帯と短い青色レーザーはCuに対する光吸収率が約65%と高く、入熱を安定させやすい。熱が安定すれば、加工欠陥が発生しにくい条件でCuを溶融させられる。ただし、1点にレーザー光を集中させるのは近赤外レーザーの方が得意。そこで、青色レーザー光で広範囲にビームを当てて溶接する箇所を加熱しつつ、近赤外レーザー光で鋭く深く加工を施すようにした。

 ハイブリッド型レーザー発振器の中核部品である青色レーザーダイオード(LD)を供給するのが日亜化学である。両社は17年から青色LDを使ったレーザー加工用のモジュール(青色LDM)の共同開発を進めてきた。

 ハイブリッド型レーザー溶接の実用化で先行するのはドイツLaserline(レーザーライン)や中国United Winners Laser(UWレーザー)などの海外勢である。青色レーザーのみを使ったレーザー溶接を手掛ける企業も増えている。

 日亜化学として単独で青色LDを拡販する選択肢もあったが、「古河電工と協力してまずは日本で実績を積むのがよいと判断した」(同社社長の小川裕義氏)という。日亜化学は青色LDを1999年に製品化して以降、光ディスクやプロジェクターなど映像機器向けを中心に展開してきたが、「最近は特にレーザー加工用途のニーズが高まっている」(同氏)という。

 今回の業務提携を機に、古河電工と日亜化学は大きく3つの取り組みを進める。