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 三菱重工グループは「2050年カーボンニュートラル」に挑むに当たって、火力発電所以外の工場や商業施設などを脱炭素化する「二酸化炭素(CO2)回収プラント」の技術開発を推し進めている。既に商用レベルの技術を確立しており、海外への納入実績もある。今後CO2回収の市場はますます拡大するとみて、さらなる技術開発で競争力を高める考えだ。

CO<sub>2</sub>回収のプロセス
CO2回収のプロセス
「冷却塔」と「吸収塔」、「再生塔」という3つのタワーで構成。発電所からの排ガス中のCO2を吸収液に固定させた後、加熱して分離。CO2を再利用する。(出所:三菱重工エンジニアリング)
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 CO2回収プラントは、製鉄の高炉やゴミ焼却炉などで発生する排ガスからCO2を回収し、きれいになった空気を大気中へ放出。回収したCO2は肥料やプラスチックの原材料に再利用したり、枯渇した油田・ガス田に圧入して閉じ込めたりする。油田にCO2を注入し、原油の粘性を低くして原油の回収率を高める「原油増進回収法」(Enhanced Oil Recovery)にも用いられる。

 三菱重工エンジニアリング執行役員CTOの洲崎誠氏は、「当社の調査では、燃料の燃焼後にCO2を回収する手法ではトップシェア。全世界の70%超の回収量を占めている」と話す。

 三菱重工グループがこの技術の研究を、関西電力と共同で始めたのは1990年。既にプラント14基を顧客に納入しており(1基は実証基)、「積み重ねてきた商用運転の経験を反映した、信頼性の高いシステムが強み」(洲崎氏)と胸を張る。

 プラントは「冷却塔」と「吸収塔」、「再生塔」という3つのタワーから成る。高炉やゴミ焼却炉などから取り込んだ高温の排ガスは、まず冷却塔に送られる。冷却塔内の上部から降ってくる冷却水に接触した排ガスは、45°C程度に冷却される。アンモニアの水素原子を炭化水素基で置換したCO2を吸収するアルカリ性の化合物アミンを含む吸収液「KS-1」の運転温度と同程度にして処理しやすくするためだ。また、後工程でのトラブルを防ぐため、排ガスからすすや重金属などの不純物を取り除く。

 冷却して不純物を取り除いた排ガスは、次に吸収塔に送られる。吸収塔内には薄板をリング状にした充塡材があり、その表面を吸収液のKS-1が流れている。吸収塔の下部から上昇する排ガスは、ここでKS-1に接触。CO2が吸収される。KS-1に排ガスを触れさせると、CO2がアルカリ性のアミンと化学的に結合し、約90%のCO2を回収できる。CO2回収後の排ガスはそのまま上昇して大気中に放出。CO2を吸収したKS-1は再生塔に送られる。

 再生塔内ではCO2を吸収したKS-1が上部から水滴のように降り、下部から上がってくる蒸気で熱せられる。ここでアミンの特性が生きてくる。アミンはCO2と固く結合しないので、熱して温度を上げると簡単にCO2が分離する。分離したCO2は99.9%と極めて高い純度で再生塔の上部から回収。再利用したり、地下へ貯留したりする。

 アミンを活用したCO2回収プラントは他社も手掛けており、システムもほぼ同じだ。三菱重工エンジニアリングが強みとするのは、「KS-1のCO2の吸収性能が高い点。高温や不純物に対して非常に安定的で劣化しにくい点。そして、熱効率が非常に高く、相対的に小さいエネルギーでCO2を分離する点だ」(洲崎氏)。