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 「Z2」「Z1」のエンジンは、空冷4ストローク4気筒DOHC機構だ。川崎重工業初の4気筒エンジンであると同時に「世界に類のない高度なメカニズム」(同社)だった。開発当時、設計・製造の苦心が推測できる。

 シリンダーヘッドの復刻プロジェクトでも、50年前の図面を基に金型を製作し、鋳造で製造する過程で「当時は設計者の意図を実現しきれなかったところがあったのでは」と想像する場面が何度か訪れた。そして、当時の技術ではできなかったが、今なら実現できる内容については、当時の技術者たちが求めた理想を忠実に再現することにした。

 例えば冷却フィン。手描きの製品図面と当時の現品を比較したところ、元はより薄い設計だったと分かった。この差についてプロジェクトメンバーは「薄い冷却フィンでは鋳造時に湯(溶融アルミニウム合金)回りが悪いため、試作を重ねるうちにだんだん厚くしていったのだろう」と考えた。当時は、金型を造る前段階で木型を製作していたが、そのときに湯回りの不十分さ(金型の隅々にまで湯が行きわたりにくいこと)が判明し「製作者が手作業で木型を修正していった」というのが、プロジェクトメンバーの推測だ。その過程で冷却フィンは徐々に厚くなっていき、図面と製品に差異が生じた。

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50年前のオリジナル部品と復刻品の冷却フィンの比較
50年前のオリジナル部品と復刻品の冷却フィンの比較
50年前の部品(上)に比べて、復刻品(下)はフィンが薄い。(出所:川崎重工)
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 そこで今回のプロジェクトでは、低圧鋳造法でのガス抜きや冷却などの要素技術を見直し、湯回りを改善。流動・凝固シミュレーションを実施して、鋳造湯口の位置と数、金型温度の最適化を図った。その結果、冷却フィンを薄くしても湯回りが良くなり、元の設計に忠実な、50年前の現品より薄い冷却フィンが出来上がった。