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 企業と学生を「マッチング」する新手の人材採用サービスを導入する企業が急増している。競技プログラミングのスキルを点数化して採用に活用する「AtCoderJobs(アットコーダージョブズ)」は前年比1.5倍の約180社、理系学生の研究内容などからスカウトできる「LabBase(ラボベース)」では前年比1.4倍の281社と登録企業数を伸ばしている。日経コンピュータの取材で2021年4月までに分かった。

 背景には企業のデジタル人材不足がある。企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みを加速させているが、自社の求める人材を計画通りに採用できている企業は少ない。特に金融業界や製薬業界、電機メーカーなど、いわゆる非IT企業はターゲットとなる学生へ求人情報を届けることすら難しいという課題を抱える。

 AtCoderJobsやLabBaseに代表される新手の就活サービスは、企業と学生の双方にメリットをもたらす。企業にとっては従来のやり方では手が届かなかった、欲しいスキルを持つ人材にアプローチする機会になる。学生にとっては自らの専門性を生かせる、想像していなかったようなキャリアと出合うチャンスが広がる。

表 多様化する就活サービスの例
サービス名特徴
AtCoderJobs競技プログラミング大会を主催。参加者の実力を評価した「レーティング」を使って採用活動ができる
LabBase研究内容、希望職種等のプロフィルを登録した学生に対し、閲覧した企業がスカウトできる
ONE CAREER学生は興味を持った企業の口コミやES・専攻における体験談を閲覧しエントリー可能
Goodfindスタートアップ、ベンチャーに特化。学生向けのスキルアップセミナーや面談等の選考サポートもあり
OfferBox文章・写真・動画・スライドなどを使って作成された学生のプロフィルを基に、企業がオファー可能
Recme学生が企業の提示するテーマに従って撮影した動画を、エントリーや企業からのスカウトに活用

競技プログラミングで培うスキルに需要

 AtCoderJobsを運営するAtCoderの高橋直大社長は「プログラミングコンテストに出場する学生は就職活動を意識せずにコンテストに参加している。高い専門性を持つにもかかわらず就活市場においては潜在層といえる」と話す。学生は自身のスキルが企業での仕事にどう生かせるかイメージを描けていないケースが多い。

 野村ホールディングスはAtCoderの競技プログラミングコンテストを主催することで「野村グループに数理科学のプロフェッショナルが携わる業務があること」を周知し、ブランディングに活用する。資産運用計画の予測モデルを構築・分析するクオンツアナリスト(数理専門家)のように、数理モデルやアルゴリズムに関するスキルが証券会社で生かせることは広く知られていなかった。だが、コンテストを通じて「一定のブランディング効果があった」(同社広報)という。

 高橋氏によると「プログラミングコンテストのスポンサーになっていること自体が、プログラミング人材のスキルを正当に評価してくれる企業である証左にもなる」と述べる。競技プログラミングで培われる能力は、「プログラムを書く」スキルだけではない。競技プログラミングは定型の解き方がない課題をどう解くか、「分からないことを分かるように具現化する」作業ともいえる。これは企業のDXのように、手法が確立されていないテーマに取り組む際にも役立つという。

 東京海上日動火災保険はデジタル戦略を推進するにあたり、アルゴリズムの構築・解読力を持つ人材の必要性を痛感。従来と異なるアプローチとしてプログラミングコンテストを主催し、採用実績につなげた。堅田英次IT企画部次長は「高度なアルゴリズムの構築・解読力を持つ人材が競争力の源泉となっていくと考えている。こうした人材との接点は今後も積極的に作っていきたい」と話す。