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 ファウンドリー事業に本気で取り組む――。2021年3月23日、米Intel(インテル)新CEOのPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏はそう宣言し、半導体製造受託事業の「IFS:Intel Foundry Service」を独立事業として開始すると発表した。台湾有事のTSMCの事業継続の不安や、昨今の半導体不足を背景にして、エレクトロニクス業界や自動車業界だけでなく、欧米政府も期待している。こうした期待に応えられる鍵は、同事業の独立採算制と、Mooreの法則の終焉(しゅうえん)対策の実装技術にある。

 米中対立が先鋭化する中で、台湾有事の際に台湾TSMCがこれまで通りに事業を継続できなくなるかもしれないという懸念が、半導体業界や自動車業界だけでなく、欧米の政府にも広がっている。米国ではトランプ政権時に中国に半導体を使わせない/造らせない戦略を採っていた。バイデン政権でもこの戦略は続いているが、さらに自国での製造にも力を入れるようになった。バイデン大統領が2021年3月末に発表した2兆米ドル(約217兆円)の米国インフラ投資計画のうち、500億米ドル(約5兆4000億円)を半導体製造支援に回すとされている。

 このバイデン大統領の発表を知っていたかのように、その1週間ほど前にIntelのGelsinger氏がオンライン会見「Intel Unleashed: Engineering the Future」(米国時間の2021年3月23日に開催)において、同社の製造力強化に向けた戦略「IDM 2.0」を公表した*1。バイデン政権の投資計画の背景には中国との覇権争いやコロナ禍で弱った経済立て直しがある一方、IntelのIDM 2.0戦略の狙いはプロセス微細化の遅れで弱体化した同社の製造力回復を図ることだ。思惑は異なるものの、奇(く)しくも両者の目指す先や実行時期は一致している。

オンライン会見に登壇したPat Gelsinger氏
オンライン会見に登壇したPat Gelsinger氏
(出所:Intelの動画からキャプチャー)
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 米国メディアの報道ではインフラ投資計画の500億米ドルの大半がIntelに回るとされているが、そのような発表は今のところない。Intel以外の半導体メーカーも連邦政府からの支援に大きな期待を寄せており、例えば半導体製造受託大手の米GLOBALFOUNDRIES(グローバルファウンドリーズ)は、21年4月26日に本社を、カリフォアルニア州サンタクララのオフィスからニューヨーク州マルタにある工場に突然移した*2。その発表会には、民主党の上院議員で多数党院内総務を務めるChuck Schumer(チャック・シューマー)氏が登壇し、政治色の濃さがにじみ出ていた。