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 売上高の4割が「蒸発」する──。こんな発表に株式市場が動揺している。

 発表した会社は、AI(人工知能)を使ったOCR(光学的文字認識)サービスなどを提供するAI inside。AI開発で注目のスタートアップだ。

 同社は2021年4月28日、パートナーのNTT西日本からライセンス契約の一部を更新しないとの通知を受け、2022年3月期に17億6300万円の売り上げが減少するとの見込みを発表。決算発表に注目が集まっていた。ライセンス不更新の真因を探る。

NTT西日本との大口契約で売り上げが急増

 AI insideは2021年5月12日、2021年3月期の決算を発表した。売上高は前期比188.9%増の45億9700万円、営業利益は同446.1%増の23億6000万円の増収増益となった。ただし、2022年3月期は一転、売上高が同21.5%減の36億900万円、営業利益が同80.8%減の4億5300万円の減収減益予想である。

AI insideが2021年4月28日に発表したNTT西日本との大口契約の不更新についての文章
AI insideが2021年4月28日に発表したNTT西日本との大口契約の不更新についての文章
(写真:日経クロステック)
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 AI insideが4月28日に発表した内容は次の通りだ。

 同社とNTT西日本は2019年12月にパートナー契約を締結。AI insideの主力OCRサービス「DX Suite」のライトプランを、NTT西日本が「おまかせAI OCR」というサービス名称でユーザーに販売していた。いわゆるOEM(相手先ブランドによる生産)商品の位置付けで、名称は違えど両者のサービス内容は同一である。

 このライセンス契約によって、AI insideはNTT西日本に対して2021年3月末時点で合計9284件のライセンス使用を許諾。NTT西日本は、ライセンス許諾の件数に基づき、AI insideに対して2021年3月までに総額21億3700万円を支払った。AI insideの売り上げが2021年3月期に急増した大きな理由は、NTT西日本との大口契約だったわけだ。

 しかし、事態は暗転する。NTT西日本は同社の顧客に対してOCRサービスを販売してきたが、そのうちの多くのユーザーが、最低利用期間である12カ月を待たずに解約する結果となった。12カ月未満での解約割合は「非公表」(NTT西日本広報室)だ。

 これを受けて、NTT西日本は4月28日、AI insideに対してライセンス契約の一部を更新しないと通知した。AI insideが許諾した9284件のうち、2021年5月から6月にかけて7636件の契約が不更新となる見込みだ。

 AI insideは、更新されないライセンスがさらに増加する恐れを勘案し、9284件全てが不更新と仮定した場合、2022年3月期には17億6300万円の売り上げが減少するとの見込みを開示した。これは、2021年3月期の総売上高の約38%に当たる額である。

 この発表を嫌気して、AI inside株は売りが殺到。大型連休を挟んだ4月30日、5月6日と2営業日連続のストップ安となった。3営業日目の5月7日には、株価の極端な上昇や下落を防ぐために変動幅を一定範囲に制限する「制限値幅」の下限を拡大する対象銘柄に指定された。因果関係は不明だが、同時期に東証マザーズ指数も続落したことから、投資家からは「AI insideショック」との言葉も飛び出した。