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 パラゴムノキとグアユールから造れるのは天然ゴムという点では同じだが、基本的な特性には違いもあるという。同社は20年代中にタイヤ材料へ本格適用することを目指して性質や性能評価を進める。トラックやバス、鉱山用といった大きく耐久性の高いタイヤ向けで基礎検討を進めつつ、乗用車用タイヤへの適用も視野に入れたい考えだ。

 ただ、グアユールは種ごとにゴム含量や生育速度のばらつきが大きい。同じ面積で育成しても天然ゴムを得られる量や時期に差が出てしまい、生産性を高く維持できない。このままでは、安定供給を求められる量産タイヤへの適用も難しくなる。

 同社は遺伝子解析技術を強みとするイスラエルNRGene(エヌアールジーン)との共同研究で、グアユールの複雑なゲノム配列を解読することに成功。成長が早くゴム含量が多い種子の選抜を可能にし、それを大量増殖させることで天然ゴムを安定的に製造しようと試みている。

 グアユールの大量増殖で組むのがキリンホールディングスだ。ブリヂストンが選定した高いゴム含量を持つ品種の種子をキリンホールディングスの研究所(ラボ)で発芽させて、「袋型培養槽」と呼ぶ技術で苗を大量に増殖させる。増殖後の苗をブリヂストンに提供して、米アリゾナ州の農場で大量栽培するといった取り組みである。

 袋型培養槽はキリンホールディングスの独自技術だ。1個の苗を同培養槽内で液体培養することで、同じ性質を持つ個体を約500倍に増殖できるという。「特殊なガス環境下で旺盛な茎の増殖を確認できた」(同社)。同培養槽は樹脂フィルム製で、軽量かつ安価なのが特徴である。袋内を無菌状態で維持しやすく、持ち運びも容易である。

「袋型培養槽」でのグアユール大量培養
「袋型培養槽」でのグアユール大量培養
ブリヂストンとキリンホールディングスが取り組む。(出所:ブリヂストン)
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 袋型培養槽で大量増殖したグアユールは、栽培後1年後、2年後ともに通常の栽培法に近いゴム含量で推移しているという。今後は、ブリヂストンによる優れたグアユール品種の確保を進めると同時に、天然ゴムの大量製造に向けた設備の検討を進めていく。

リトレッドでCO2半減へ

 脱炭素に貢献する天然ゴムを確保しつつ、利用後まで材料を効率的に使う取り組みも進める。その1つが、摩耗したタイヤに新しいトレッド(接地面)を巻き付けて貼り替える「リトレッド」である。

 ブリヂストンは、新品タイヤと2回のリトレッドを組み合わせて使えば、新品タイヤ3本を使った場合に比べて材料量とCO2排出量をともに半減できると試算する。また、リトレッドタイヤは一般的に新品タイヤ比約4割のコスト削減が期待できる。

 リトレッドは商用車用タイヤで既に普及しているサービスで、ブリヂストンも世界展開する。ただ、国・地域によって利用率に差があるため、日本を中心に利用率が低い場所でサービスを広げてさらなる脱炭素化に貢献したい考えだ。

 かつて、ブリヂストン創業者の石橋正二郎氏は「社会の役に立ち貢献する事業は永続する」という信念を持っていた。創業から90年が経過し、ここにきて社会・環境貢献を掲げる企業に投資が一層集中している。創業者と同じ石橋姓を持つ現Global CEOの秀一氏は、創業100年に向けてさらなる社会・環境貢献にかじを切る。

ブリヂストン技術センター/東京ACタイヤ製造所
ブリヂストン技術センター/東京ACタイヤ製造所
東京都小平市に構える研究開発の中枢施設だ。(撮影:日経クロステック)
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