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 NECは2021年5月6日、AI(人工知能)を使った顔認証やサイバー攻撃の検知などの速度を最大20倍に高められる技術を開発したと発表した。着想のヒントはひらめきのような即断と時間をかけた慎重な熟考を、意識せずに使い分けられるヒトの脳の働きにあった。

 新技術は映像などの連続データをAIに分析させた際に、少ないデータでも分析結果が「もっともらしい」と判断できたらすぐに回答する。逆に判断しにくい場合は回答の信頼度が得られるまでデータを取り込んで分析を続ける。

NECが開発した新AI技術の概要
NECが開発した新AI技術の概要
(出所:NEC)
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 この2つの異なる方向の働きより、多数の分析結果を返す場合、精度を維持したまま総合的な認識速度を3〜20倍に高められることを実験で確認したという。パラメーターを変えることで認識精度をより高めるなどの運用も可能だ。既に実用レベルにあり、商用化の第1弾として2022年3月までに自社の顔認証AIエンジン「NeoFace」に組み込む計画である。

脳神経科学出身者との混合チームで開発

 NECは、新技術に関する研究成果を同日、AI分野で最も権威がある学会の1つである「International Conference on Learning Representations(ICLR)2021」で発表した。論文を投稿すると、注目すべき論文に与えられる「スポットライト発表」に選ばれた。選ばれるのは全論文の約5%という。

 新技術の開発に当たり、NECは開発チームに脳神経科学者から転向した研究者を中心メンバーに加えた。開発の発端はこの研究者の着想にあった。

 「ある統計数学の理論が脳の働きを最もよく説明できる」という2015年発表の脳神経科学の研究と同じ原理を、深層学習(ディープラーニング)や機械学習にも応用できるのではないかと着想したという。

 今回の新技術は、連続データを分析する用途ならばデータの種類を問わず効果を発揮するという。NECは顔認証の他にも用途開拓を進める考えで、映像認識分野では胃カメラや内視鏡を使う医療診断に応用できるとみる。

 音声認識や自然言語処理、情報システムのログ分析、センサーデータの分析などでも速度向上の効果が出るという。システムのログ分析に活用すれば精度を落とさず異常をいち早く検知できるため、サイバー攻撃検知ツールに適用できる。IoT(インターネット・オブ・シングズ)などへの応用も見込む。