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 ホンダが2021年4月に日本で発売した小型SUV(多目的スポーツ車)の新型「ヴェゼル」は、ボディー骨格へのホットスタンプ(高張力鋼板の熱間プレス材)の使用量を増やし、側面衝突の1つである「ポール衝突」に対応した(図1)。

ヴェゼル
図1 小型SUVの新型「ヴェゼル」
ホットスタンプの使用量を増やしてポール衝突に対応した。(撮影:日経Automotive)
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 ポール衝突とは実際の走行シーンにおいて、電柱などの細い物体への衝突を想定したもの。日本では国土交通省が定める「道路運送車両の保安基準」として、18年6月以降の新型車から同試験への適合が求められている注1)

注1)日本のポール衝突試験では、車速32km/h(全幅が1500mm以下の車両の場合は同26km/h)の台車に試験車両を載せて、電柱を模擬した直径254mmのポールに対して、75度の角度で運転席側の側面を衝突させる。(1)運転席に乗せたダミー人形への衝撃が一定値以下であること、(2)ドアが外れないこと、(3)燃料漏れが一定量以下であること──を義務付けている。なお、日本の自動車アセスメント(JNCAP)への導入は検討中である。

 欧州の自動車アセスメントプログラム「Euro NCAP」でも、ポール衝突試験は側面衝突試験の1つに含まれている。運転席側の中央付近(センターピラーの周辺)に物体をぶつける通常の側面衝突試験よりも条件は厳しい。

 先代ヴェゼル(以下、先代車)では、フロントピラーのインナー材だけに、引っ張り強さが1.5GPa級のホットスタンプを使っていた。ボディー骨格全体に対するホットスタンプの使用比率(質量比)は1%だった。これに対して新型ヴェゼル(以下、新型車)では、フロントピラーとサイドシルに1.5GPa級のホットスタンプを適用した。ホットスタンプの使用比率は4.5%となっている。

 ポール衝突試験では、運転席のドア中央あたりにポールがぶつかる。そのため、衝突時の衝撃荷重を、センターピラーだけで受け止めるのは難しい。そこで新型車では、フロントピラーとサイドシルにホットスタンプを適用し、これらの部位で主に衝撃荷重を受け止めるようにした。

 一方、センターピラーのアウター材は590MPa級、インナー材は980MPa級、ピラー内部の補強材は1.2GPa級(1180MPa級、以下同じ)の高張力鋼板(冷間プレス材、以下同じ)を使った。深絞り加工が必要なアウター材は成形しやすい590MPa級、インナー材は成形性に優れる高λ型の980MPa級注2)、形状が比較的単純な補強材は1.2GPa級とした(図2)。

注2)高λ型の980MPa級とは、延性(伸び値)と穴広げ性(λ値)を両立させた高張力鋼板のこと。

新型車のボディー骨格
図2 新型車のボディー骨格
フロントピラーとサイドシルに1.5GPa級のホットスタンプを適用した。(出所:ホンダ)
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