全2311文字
PR

 米Google(グーグル)は2021年5月18日(米国時間)、年次カンファレンス「Google I/O 2021」で量子コンピューターに関するロードマップを発表した。米カリフォルニア州サンタバーバラに新しい拠点を開設し、2029年までに100万量子ビットを搭載した誤り訂正ができる量子コンピューターを開発する。

 「現在の量子ビットはとても壊れやすい。そこで我々の次のマイルストーンは、誤り訂正によって情報を失わずに保持できる論理量子ビットを作り出すことになる。数年がかりの取り組みになる」。グーグルのSundar Pichai(スンダー・ピチャイ)CEO(最高経営責任者)はGoogle I/Oの基調講演でこう語った。

 グーグルは2019年秋に、同社の量子コンピューターが従来型のコンピューターでは到達し得ない計算能力を持つことを示す「量子超越性」を実証した。しかし現在の「Sycamore(シカモア)」量子プロセッサーは、量子ビットの数が54個と少なく誤り訂正ができない。

 このような量子コンピューターは「NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum Computer、ノイズがありスケールしない量子コンピューター)」と呼ばれており、実用的な性能は未知とされる。グーグルが示した量子超越性も「従来型のコンピューターではシミュレーション不可能」ということを示しただけで、従来型のコンピューターでは不可能なアプリケーションを開発できることまで示したわけではなかった。

量子化学シミュレーションなどができるハードウエアを目指す

 グーグルが目指すのは、従来型のコンピューターでは不可能な規模の「量子化学シミュレーション」などができる、実用的な量子コンピューターだ。そのためには量子ビットの誤り訂正が不可欠となる。1000個の物理量子ビットが連動して、量子情報が消えない1個の論理量子ビットを作り出す。誤り訂正が可能で実用的な性能を有する量子コンピューターの実現には、100万個の物理量子ビットが必要だ。グーグルはこのようなハードウエアを2029年までに実現する計画である。

 100万物理量子ビットを備えた量子コンピューターを開発するため、サンタバーバラに新しい量子コンピューター開発拠点を建設した。量子コンピューターのハードウエアを開発するだけでなく、量子コンピューターのクラウドサービスを提供する「量子データセンター」としても使用する。

グーグルが建設した量子データセンター
グーグルが建設した量子データセンター
出所:米グーグル
[画像のクリックで拡大表示]

 現在のSycamoreは超電導方式の量子ビットを絶対零度に近い超低温に冷やすために、直径1メートル程度の円筒型の希釈冷凍機を使用する。100万個の量子ビットを備えるハードウエアを実現するには、希釈冷凍機のサイズを数倍から数十倍に拡大する必要がある。そのため従来よりも規模の大きい開発拠点を建設した。

100万個の量子ビットを格納する希釈冷凍機の予想図
100万個の量子ビットを格納する希釈冷凍機の予想図
出所:米グーグル
[画像のクリックで拡大表示]

 グーグルは今回、実用的な量子コンピューターを実現するまでに重要となるステップについても明らかにした。