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 デジタル聴診デバイスを手掛けるシェアメディカル(東京・千代田)は2021年5月13日、新型コロナウイルス肺炎を含む呼吸器疾患の早期診断・重症化予測を目的としたAI(人工知能)聴診デバイスの研究を聖マリアンナ医科大学と共同で始めると発表した。同社のデバイスを用いて呼吸器疾患の有病者と健常者の聴診データを収集し、両者を区別できるか検証する。200年の歴史を持つ聴診の進化を通じて狙うのは診察のリモート化だ。

デジタル聴診デバイス「ネクステート」は既存の聴診器と組み合わせて使う
デジタル聴診デバイス「ネクステート」は既存の聴診器と組み合わせて使う
(出所:シェアメディカル)
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 シェアメディカルのデジタル聴診デバイス「ネクステート」は聴診器で得られる生体音を増幅しデジタル化する。チェストピースと呼ばれる胸部に当てる部分は従来のものをそのまま使い、医師の耳につながるチューブの代わりにネクステートを組み合わせる。デジタル化した生体音をBluetoothで転送することで、聴診のワイヤレス化を実現した。

 このたび始める共同研究では新型コロナウイルス肺炎を含む呼吸器疾患の有病者400人と健常者400人の生体音データを収集し、まず両者を区別できるAIの確立を目指す。その後は異常の有無を区別するだけでなく、その異常がどの疾患によるものかも判別できるようにし、厚生労働省から医療機器としての承認を取得する考えだ。

 この共同研究は科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)に採択されており、2021年5月1日から2022年3月31日にかけて実施される。まずデータの収集を進め、8月ごろからAIを用いた本格的な解析を実施するという。

 シェアメディカルは聴診デバイスで取得した生体音の解析に画像認識AIを応用する。まず生体音を、周波数ごとの強さで色分けして示すスペクトラム画像に変換する。このスペクトラム画像をAIで分析することで、呼吸器疾患の有病者に特徴的な生体音を探す仕組みだ。この他にも聖マリアンナ医科大学が持つ医療AIの知見を生かし、最適なシステムの構築を目指す。

 聴診では医師が呼吸や心拍などの生体音を耳で聞いて診察するため、利用されるのは人間の可聴域のデータに限定されてきた。AIの耳を借りれば、人間には認識できないノイズからも異常を検知できる可能性がある。