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 マネーフォワードは2021年3月22日、金融機関向けに顧客データの分析を可能にするサービス群「マネーフォワードFintechプラットフォーム(以下、Fintechプラットフォーム)」の提供を開始した。横浜銀行が第1号ユーザーとして名乗りを上げている。

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 横浜銀行とマネーフォワードは、データ活用のノウハウを他の地域金融機関にも広めていく考えだ。横浜銀行でデジタル戦略部ビジネスアシスタントリーダーを務める佐藤惟氏は、「データ分析モデルの開発と他の地域金融機関への展開を、マネーフォワードと共同で注力していきたい」と意気込む。

 「金融機関が単にFinTech企業とAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)接続しただけでは、FinTech企業にデータを出すだけで終わってしまう。金融機関がデータ活用でメリットを得られるようにし、継続性のある関係を構築したい」。マネーフォワード執行役員マネーフォワードエックスカンパニーCOO(最高執行責任者)の神田潤一氏は、Fintechプラットフォームの狙いをこう説明する。横浜銀行とマネーフォワードはデータ活用を旗印に協力してサービスを提供することで、地域金融機関とFinTech企業との新たな協業の在り方を示そうとしている。

AWSのクラウドサービスで構築

 Fintechプラットフォームは、複数の金融機関の情報を集約して表示できるアカウントアグリゲーションや各種サービスのログインを一元化するID/認証といった、これまでマネーフォワードが提供してきたサービスにデータ蓄積と分析の機能を組み合わせたもの。データベースやデータ分析、ID/認証などの機能は、米Amazon Web Services(AWS)のクラウドサービスを用いて構築している。

 「データを安価に長期間保存できる器として、AWSのサービスが必要だった」とマネーフォワード執行役員マネーフォワードエックスカンパニーCSO(最高戦略責任者)の本川大輔氏は話す。AWSのサービスとして、リレーショナルデータベース「Amazon Aurora」、ストレージ「Amazon S3」、サーバーレス処理「AWS Lambda」などを利用。本川氏はAI(人工知能)のサービスを備えている点やシステムの拡張性が高い点も、AWSを採用した理由として挙げる。

 Fintechプラットフォームを採用する金融機関は、マネーフォワードがこれまで家計簿アプリやデジタル通帳アプリなどを介して接続してきた2600超の金融関連サービスから得られる顧客の資産データや決済データを活用できる。さらにインテックが提供するCRM(顧客関係管理)サービスやキャピタル・アセット・プランニングのライフプラン・シミュレーションなど、マネーフォワードのパートナー企業が提供するサービスもID/認証機能で一元的に利用できる。

「自社で開発するのは困難」

 金融機関はFintechプラットフォームを活用して、顧客が接続を同意した金融関連サービスのデータを取得し、金融機関が保有している顧客情報と合わせて分析。その成果を顧客への金融商品やコンサルティング、融資サービスの提供などに役立てられる。パートナー企業が提供するサービスの利用が進めば、さらにデータの蓄積につながる。

 横浜銀行は、まず法人向けポータルサイト「<はまぎん>ビジネスコネクト」で、Fintechプラットフォームのアカウントアグリゲーション機能を2021年8月に導入。その後、同プラットフォーム上でデジタル通帳サービスを提供するほか、「(アカウントアグリゲーションを通じて得られる)データを活用してトランザクションレンディングの審査モデルの高度化を図る予定」(横浜銀行の佐藤氏)だ。

 「アカウントアグリゲーションを自力で開発するのは難しい」と佐藤氏は話す。Fintechプラットフォームを使えば、マネーフォワードがこれまでAPIで金融機関とアプリを接続してきた蓄積を生かして、各種金融関連サービスを介して得られる顧客データを統合して分析できるようになる。

 地域金融機関の多くは、データ活用に新たなビジネスの活路を求めているものの、自力による事業化に苦慮している。Fintechプラットフォームによって地域金融機関が協力してデータ活用のノウハウを共有すれば、商品提供や融資などでネット銀行に対抗できる武器になる可能性がある。横浜銀行とマネーフォワードは当面、同社がアカウントアグリゲーションの機能などを提供している40超の金融機関や事業会社を対象に、Fintechプラットフォームを利用したデータ活用のノウハウを提供していく考えだ。