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 ヤマハ発動機(以下、ヤマハ発)が小型・低速の新たな4輪電気自動車(EV)を開発した。名称は「NeEMO(ニーモ)」。「ハンドル形電動車いす」と同分類の1人乗りモビリティーだ。運転に免許は不要である。最高速度は6km/hまで出せる。基本は歩道を走行し、歩道がない道路では右側の路側帯や路肩を走る。埼玉県和光市で予定する20歳以上を対象にした実証実験で使い勝手を確かめ、量産販売を含む事業化への糸口を探っていく。

ヤマハ発動機の「NeEMO(ニーモ)」
ヤマハ発動機の「NeEMO(ニーモ)」
(撮影:日経クロステック)
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 同車は、2019年開催の「東京モーターショー」に出展したコンセプト車「YNF-01」をベースに、サイドミラーや警報機、警音器などを追加。ハンドル形電動車いすの規格に合致させ、公道を走れるようにした。

 ヤマハ発は現在、手動車いすのフレームを活用し、左右の後輪をモーター付きに交換可能な「簡易型電動車いす」を製品展開する。屋内外の両方での移動を想定しているため、軽量で小型の電動モビリティーという位置付けだ。手元のジョイスティックで操縦し、最高速度も標準仕様車で4.5km/hにとどまる。

他社比1.3倍の段差走破性

 新開発のNeEMOは屋外における移動を念頭に置く。「車両を操る楽しさを追求してヤマハ発らしいモビリティーに仕上げた」――。企画を担当した、同社ランドモビリティー事業本部SPV事業部JWビジネス部JW営業グループサービス・企画担当主査の早川嘉宏氏は企画コンセプトをこう説明する。

 同社らしさは走行性能、とりわけ段差の走破性に表れている。ハンドル形電動車いす「セニアカー」を市場展開するスズキの代表車種「ET4D」や「ET4E」の段差乗り越え高さは75mm。ヤマハ発のNeEMOはこの1.3倍、100mmを実現した。

 これにより、操縦時の安定性と快適性を同時に高める効果が期待できるという。例えば、信号のある横断歩道を渡るときは、歩道から車道、車道から歩道と、それぞれに存在する段差をクリアしなくてはならない。段差乗り越え高さを1.3倍にすれば、それだけ前輪が段差につまずく危険性を抑えられるはず。振動による運転者への負荷も軽減可能とみる。

走行時の様子を斜め前から撮影
走行時の様子を斜め前から撮影
(撮影:日経クロステック)
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走行時の様子を斜め後ろから撮影
走行時の様子を斜め後ろから撮影
(撮影:日経クロステック)
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段差乗り越え高さは他社の量産車比で1.3倍の100mmに設定
段差乗り越え高さは他社の量産車比で1.3倍の100mmに設定
(撮影:日経クロステック)
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 段差での走破性を高めるために搭載した、径が大きく幅も広い専用設計のタイヤが目を引く。タイヤは直径355mm、幅106mm、ホイールの直径は203mm(8inch)もある。全4輪で同じものを採用している。

 ハンドル形電動車いすとしては珍しいタイヤの大きさで、「道路上の溝にタイヤがはまることなく安定して走れる」(早川氏)という。加えて、運転者からタイヤ周辺がよく見える車両デザインを採用し、万が一の脱輪を回避しやすくした。