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フォノニック結晶を搭載したSiの熱伝導シミュレーション結果
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フォノニック結晶を搭載したSiの熱伝導シミュレーション結果
(図:パナソニック)

 物質内の熱伝導を制御できる「フォノニック結晶」をパナソニックが世界で初めて*1産業応用した。フォノニック結晶は、孔径数十nmの周期的な空孔で構成される人工結晶であり、熱の伝搬を担う原子振動を干渉・散乱して、物質に熱を通りにくくする作用がある。

*1 同社発表による。

 同社はフォノニック結晶の断熱性を利用して、赤外線センサーの熱を受光部に封じ込め、センサー感度を飛躍的に高めた。これまで熱の逃げ道となってしまっていた、受光部と電極を架橋しているシリコン(Si)支持脚部にフォノニック結晶を搭載し、断熱したのだ。赤外線センサーは、受光部が赤外線(熱)を吸収して温度変化を起こし、その温度変化を読み取ることで対象物の温度を測定している。従って、受光部から熱が漏れ出さないほうがセンサー感度を上げられる。

(a)フォノニック結晶が受光部の熱を断熱
(a)フォノニック結晶が受光部の熱を断熱
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(b)センサー感度が10倍に
(b)センサー感度が10倍に
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受光部の熱を断熱してセンサー感度を向上
パナソニックが開発したフォノニック結晶搭載の赤外線センサーの電子顕微鏡写真とセンサー感度を示した。赤外線センサーの画素はMEMS構造になっており、シリコン基板上に受光素子や電気配線が形成されている(a)。受光部と電極の間を支持脚が架橋している。そのシリコン(Si)支持脚に、フォノニック結晶という周期構造を持つ孔径数十nmの円孔を空けた。すると支持脚が受光部の熱を外部に逃がさない断熱材として働く。受光部の受熱性が向上するため、センサー感度も約10倍上がる(b)。(写真:パナソニック)

 5μm角の支持脚に孔径26nm、1周期38nmのフォノニック結晶を搭載したところ、支持脚の熱伝導率が31.2W/mKから3.6W/mKまで低減。これにより、同じ光強度当たりの熱起電力*2が10倍、つまりセンサー感度が10倍に向上したとする。これは、受光部の面積を10分の1にしても同じ感度が得られることを意味する。「(受光部を小型化できれば)チップ自体のコストが下がるだけでなく、レンズの口径も小さくなるので、全体のコストダウンが見込める」(パナソニック テクノロジー本部 マテリアル応用技術センター 2部 1課 主幹研究員 藤金正樹氏)。

*2 赤外線センサーは、ゼーベック効果による熱起電力を検出して温度変化を計測している。

 支持脚の機械的強度をシミュレーションしてから空孔を空けるため、強度低下は起きないとする。