「大企業向け業務ソフトで成功している日本企業が少ない」
旧ワークスアプリケーションズの退任後、「ありがたいことに日本のIT企業などに声をかけてもらった」(牧野氏)。だが、牧野氏はこれまでのノウハウを生かして新たな会社を始めることを選んだ。それがパトスロゴスだ。
優れた企業向けソフトウエアを開発する企業を、営業やマーケティング、経営の観点から支援して製品を広めていくことを主力事業とする。対象は、社員数が数百人以上の中堅から大企業向けのソフトウエア。国産の大企業向けソフトウエアビジネスにこだわってきた牧野氏の経験を生かす形だ。
その背景には、「大企業向けの業務ソフトウエアで成功している日本企業が少ない」との牧野氏の思いがある。「大企業向けにビジネスをする場合、機能や品質が優れているだけでは採用されない。大企業に向けた営業やマーケティングが重要になる。サポートを担うITエンジニアも必要だ」と牧野氏は指摘する。
しかし人数の少ないスタートアップ企業は、大企業向けの販売ノウハウを持たないだけでなく、開発を継続しながらサポートする体制を築くのも難しい。そうした企業に対し、ソフトウエアを拡販するための仕組みづくりやITエンジニア採用のノウハウ、経営者へのアドバイスなどを提供していく。
2021年5月には最初の製品として、製造業の生産ライン向け検査ソフト「DEEPS」の提供を開始した。DEEPSはAIの画像解析技術を利用して、製造した製品の外観検査を自動化するソフトウエア。目視が主流だった外観検査をAIに置き換えることで、生産ラインの効率化を支援する。「AIの活用といえば個別開発が主流のなか、業務ソフトウエアにAIを組み込んで製品化した点が特徴」と牧野氏は説明する。
DEEPSを開発したのは名古屋市に本社を置くテクムズで、100社以上の導入実績がある。牧野氏は「DEEPSのようにある程度実績がある製品の営業を支援したり、買い取って販売したり、といったビジネスが中心になる。10社前後の顧客がいるが、それ以上拡大できない。そんな製品を持つ企業に対する支援を目指していきたい」と話す。
扱うソフトウエアの分野は限定しないが、SaaS形式で提供する製品を中心に、Web EDIなどミドルウエア分野のソフトウエアも支援していく見込みだ。ただ「ERP分野は手掛けない」(牧野氏)としている。