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 ゲノムを構成する核酸を用いた医薬品開発に取り組むリボミックが、創薬を加速するAI(人工知能)ツールの開発を急いでいる。従来に比べて3倍近い速度で医薬品の候補物質をスクリーニングしたり、候補物質の構造を新規に設計したりできる新たな創薬プラットフォームを構築する。開発を進める新型コロナウイルス感染症治療薬の研究の一部にもAI技術を用いており、2021年内の社内での実装を目指す。

リボミックはRNAを応用する核酸アプタマーに強みを持つ
リボミックはRNAを応用する核酸アプタマーに強みを持つ
(出所:リボミック)

 リボミックが強みを持つのは「核酸アプタマー」と呼ばれる種類の医薬品。核酸とは生物のゲノムを構成するDNAとRNAの総称で、核酸が他の物質と結合する性質を応用したのが核酸アプタマーになる。核酸の短い鎖を合成してターゲットのたんぱく質に結合させると、そのたんぱく質が関わる反応を阻害でき、医薬品として機能する。

 核酸アプタマーの創薬手法は「試験管内分子進化(SELEX)法」と呼ばれる特徴的なもので、しばしば「魚釣り」に例えられる。ランダムな配列の核酸が含まれる試験管内に、ターゲットとなるたんぱく質を「餌」として垂らし、餌に食いついた(結合した)核酸を釣り上げる。食いついた核酸は負荷をかけると外れ、より強く結合する核酸が厳選されていく。このサイクルを繰り返すことで、ターゲットに最も強く作用する核酸の配列を見つけられる仕組み。

AIによるアプタマー創薬のイメージ
AIによるアプタマー創薬のイメージ
(出所:リボミック)
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 リボミックはAIを応用してSELEX法の効率化を進めている。2020年に早稲田大学と共同で発表した「RaptRanker」と呼ぶ技術は、ターゲットのたんぱく質に対する活性が高い核酸の配列をランキング化する手法だ。SELEXで得られた配列を機械学習させ、核酸の配列という1次元の情報だけでなく、その配列が実際に取り得る立体構造まで予測してランク付けを行う。ランキング上位の核酸配列を中心にさらに検証を進めることで、候補配列の選定を効率化できる。

RaptRankerでは有望な核酸配列を効率的に絞り込める
RaptRankerでは有望な核酸配列を効率的に絞り込める
(出所:リボミック)
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 また、釣り上げられた核酸の配列を比較することで、共通する部分を洗い出すことも可能だ。配列に共通する部分があれば、その部分はターゲットと結合する上で重要だと推測できる。釣り上げられた核酸配列は無駄な部分を削ったり修飾を加えたりして安定性や活性を高めることで最終的な医薬品になるが、重要な部分がわかっていれば微調整を効率的に進めることができる。リボミックによると、SELEX法を人の手で実施した場合に比べて、RaptRankerを用いると3倍近い速度で候補配列を厳選できるという。