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 太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギー(再エネ)由来100%の電力には、「電気料金が高くつく」「供給が不安定」というイメージがつきものだ。しかし、安価な再エネ電力を確保できる手法も確立されつつある。その1つが「自己託送」だ。

 自己託送とは、遠隔地で自家発電した電力を、電力会社の送配電網を使って自社のオフィスや工場へ送電して消費するもの。発電者と電力の消費者が同一企業なので、売買に電力会社が介在せず、安価かつ安定して再エネ由来100%の電力を確保できる。

 ソニーは2021年4月、独自の自己託送を開始した。自己託送では通常、自社の敷地内に太陽光発電パネルなどの自社保有の発電設備を設置するのが一般的。しかし今回の同社のケースは、第三者の所有する「牛舎」の屋根に別の企業が設置した太陽光パネルで発電した電力を使うのが特徴だ。

太陽光発電パネルを設置した牛舎
太陽光発電パネルを設置した牛舎
(出所:デジタルグリッド)
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牛舎の屋根に設置した太陽光発電パネル
牛舎の屋根に設置した太陽光発電パネル
愛知県東海市にある農家からFD(愛知県刈谷市)が牛舎の屋根を賃借し、FD所有の太陽光発電パネルを設置している。発電した電力の送電はFDが管理し、ソニーの工場へ供給する。(出所:FD)
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再エネ賦課金が上乗せされない自己託送

 通常、企業が再エネ電力を購入する際には、どうしても電力料金が高くついてしまう*1。太陽光発電の電力を利用する場合、第三者がメガソーラーなどで発電した電力を電力会社が固定価格で買い取って販売するが、その際に「再生可能エネルギー発電促進賦課金」(21年5月時点では原則として3.36円/kWh)などが上乗せされるからだ。しかし、自己託送なら、この再エネ賦課金などのプレミア料金が上乗せされない。

*1 再エネ由来100%の電力を利用する際は通常、電力会社が準備したメニューを利用して購入する。ただし、こうしたプランで提供される電力は現在、企業間で奪い合いの状況に拍車がかかっている。安定して入手できる保証がない上、通常の電気料金より10〜30%程度高い。

 そもそも自社用の設備なので、発電した電力は全て自社で消費できる。企業間の再エネ電力争奪戦に巻き込まれず、安定して再エネ電力を確保できる。

 これらのメリットに目をつけ、自己託送を採用する企業が増え始めている。ソニーは20年2月に静岡県内で既に自己託送を実現している。ソニー・ミュージックソリューションズJARED大井川センター(静岡県焼津市)の物流倉庫の屋上に約1.7MWの太陽光発電パネルを設置。余剰電力を中部電力の送配電網を介して、同社の製造工場である静岡プロダクションセンター(静岡県吉田町)へ供給している。自己託送で賄っている電力は約900MWh。静岡プロダクションセンター全体で消費する電力の4%に当たる。

(出所:ソニー)
(出所:ソニー)
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