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中国ウイグル問題が波及

 中国と言えば、今年に入り、新疆ウイグル自治区における人権問題に一段と注目が高まった。同自治区における少数民族、ウイグル族の強制労働問題は、太陽光発電産業にも波紋が広がっている。

 SPV マーケットリサーチの最新のデータによると、中国は、世界の結晶シリコン系セル(発電素子)生産シェアに関し、容量ベースで70%以上、原料のポリシリコン生産量では80%以上を占めている。 そして、中国のポリシリコン生産量の実に50%近くが新疆ウイグル自治区からである。つまり、ウイグル自治区は、太陽光発電に不可欠な材料の重要な供給地なのだ。

 SPVマーケットリサーチの創立者・チーフマーケットリサーチアナリストであるポーラ・ミンツ氏は、「米国や他の国々は中国のウイグル人の扱いを非難していますが、具体的にどのような処置・制裁を取るかは難しい問題です。太陽光発電業界は、気候変動と(産業の)成長戦略を『モラル・コンパス(倫理基準)』を使い、どのようにバランスをとっていくかが問われます。各国は、ポリシリコン、ウエハー、インゴット、または新疆ウイグル自治区で製造されたセルおよびそのセルを含む太陽光パネルの輸入を拒否できますが、そうすると、より高い価格で(同自治区以外からそれらを)調達することになります」、と「利益と倫理」の選択に迫られるビジネス上のジレンマを指摘しった。

 実際、今年2月には、米サンパワーなど世界のトップメーカーを含む175の太陽光発電関連企業が、太陽光発電設備のサプライチェーン(供給網)における強制労働に反対する誓約書に署名した。米太陽エネルギー産業協会(SEIA)がリードしたこの「誓約」運動は、誓約書に署名することにより、自社で使用している製品が中国の新疆ウイグル自治区や世界の他の場所で強制労働に結びつかないようにするという誓約と、ウイグル族の強制労働問題など倫理上、問題のある慣行への抑止を表明することになる(図2)。

図2●SEIA「ソーラーサプライチェーンにおける強制労働に反対する誓約書」に署名した企業(一部)
図2●SEIA「ソーラーサプライチェーンにおける強制労働に反対する誓約書」に署名した企業(一部)
(出所:SEIA)
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 SEIAは4月末、「ソーラー・サプライチェーン・トレーサビリティ(生産履歴の追跡)・プロトコルツール」をリリースした。これを使えば、新疆ウイグル自治区で製造されたポリシリコンや太陽光向けインゴット、ウエハーに米太陽光発電産業のサプライチェーンが現在どの程度依存しているかについて情報を得られる。加えて、太陽光パネル製造企業などは購入するコンポーネントの出所を追跡し、購入製品が強制労働によって作られたものでないことを保証するのに役立つという(図3)。

図3●SEIAによって製作・発表された「太陽サプライチェーン・トレーサビリティ・プロトコルツール」
図3●SEIAによって製作・発表された「太陽サプライチェーン・トレーサビリティ・プロトコルツール」
(出所:SEIA)
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