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 電気自動車(EV)への移行を戦略的に推進する欧州が、ついに脱エンジンに向けて大きな決断を下した。2026年以降、欧州連合(EU)はゼロ排出車(ZEV)以外のクルマをサステナブル投資の対象から除外する。

 そうした決断を明記したのが、「EUタクソノミー規則」(後述)を補足する委任規則である。EUは現在、資金を持続可能な経済活動により流れやすくするさまざまな方策の整備を進めている。その1つが、環境的な持続可能性の観点から妥当な経済活動を分類する「タクソノミー」(分類法)という枠組みだ。20年6月、EUはタクソノミーに関するEU規則「Regulation(EU)2020/852」(通称:EUタクソノミー規則)を成立させ、それを補足するための「技術的スクリーニング基準」の策定を進めていた。

 技術的スクリーニング基準とは、経済活動が「気候変動の軽減」または「気候変動への適応」に実質的に貢献しているか否か、他の環境的な対象に著しく悪影響を与えていないか否かを判断するためのものだ。そして、その第1弾となる技術的スクリーニング基準の草案が、Regulation(EU)2020/852を補足するEU委任規則の草案という形で示され、21年4月21日(現地時間)に欧州委員会委員の間で政治的な合意がなされた(図1)。

図1 欧州委員会副委員長のValdis Dombrovskis(ヴァルディス・ドンブロウスキス)氏(左)と欧州委員のMairead McGuinness(マリード・マクギネス)氏(右)
図1 欧州委員会副委員長のValdis Dombrovskis(ヴァルディス・ドンブロウスキス)氏(左)と欧州委員のMairead McGuinness(マリード・マクギネス)氏(右)
「Regulation(EU)2020/852」を補足するEU委任規則の草案が政治的に合意された2021年4月21日の記者会見に登壇した。(出所:EC - Audiovisual Service)
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 このEU委任規則では、ANNEX 1(付属書1)において、乗用車に関する技術的スクリーニング基準を示している。具体的には、25年末までは二酸化炭素(CO2)が排出量で50g/km未満、26年以降はゼロという基準を掲げている。EUはこれまで、燃費・CO2排出量規制でプラグインハイブリッド車(PHEV)を優遇してきた(図2)。そのPHEVですら、純エンジン車やハイブリッド車(HEV)と同様、サステナブル投資の対象から外されることになったのである。

図2 スウェーデンVolvo(ボルボ)のPHEV「XC40 Recharge Plug-in hybrid」
図2 スウェーデンVolvo(ボルボ)のPHEV「XC40 Recharge Plug-in hybrid」
欧州で売れ筋のPHEVの1つ。(出所:Volvo)
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 PwCネットワークの戦略コンサルティング部門である「Strategy&」でディレクターを務める赤路陽太氏によれば、同EU委任規則では、船でもハイブリッドは対象外とされており、自動車に限らず26年以降は、基本的にエンジンは(サステナブル投資の)対象外とする方向という。EUは脱エンジンに向けて覚悟を決めたといえそうだ。

 では、技術的スクリーニング基準においてサステナブル投資の対象から外されることは、どんな影響をもたらすのか――。端的に言えば、ESG(環境、社会、ガバナンス)を重視する投資家から、投資を得にくくなる可能性が高まる。