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 人間には理解不能な1次元の画像データ、いわば2次元画像の「ゴースト」をAI(人工知能)で分析して目的の細胞を短時間で選別する――。「ゴーストサイトメトリー」と呼ばれる技術を生かした細胞分析分離装置の研究開発に取り組む東京大学発スタートアップのシンクサイト(東京・文京)が、実用化に向けた動きを加速している。細胞治療や創薬、診断などに応用でき、2023年に量産化を目指す考えだ。

 ゴーストサイトメトリーを一言で説明すると「画像を見ずに画像の持つ情報だけを見て細胞を識別する」技術になる。形態に基づいて細胞を識別するには細胞の画像が必要になるように思われるが、本当に必要なのはその画像が持っている情報だけで画像そのものは必要ない、というのがゴーストサイトメトリーの考え方だ。画像の生成という過程をスキップすることで、細胞の分析にかかる時間を大幅に短縮できる。

 シンクサイトが細胞分析分離装置の活用を狙うのは創薬や細胞治療、診断などの領域だ。このうち開発が先行しているのは細胞治療向けの製品で、治療に使える高い品質の細胞をより分ける工程での貢献を見込む。成長市場にいち早く投入し、シェアを獲得したい考えだ。

細胞分析分離装置の試作品
細胞分析分離装置の試作品
(写真:日経クロステック)
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 細胞分析分離装置は細胞を分析する「セルアナライザー」と、細胞を分離する「セルソーター」の大きく2つの要素で構成される。細胞を1つずつ分析しながら、目的の細胞をより分けていくものだ。例えば培養した細胞群の中から、異常な形の細胞を排除して、正常な細胞だけを回収することができる。

 細胞分析分離装置に求められるのは、素早く正確に細胞を識別し、リアルタイムで分離していくこと。現在広く使われている「フローサイトメトリー」と呼ばれる手法では、目的の細胞を蛍光色素などで標識して、蛍光の度合いによって細胞を識別する。しかしこの手法ではより分けた後の蛍光色素の除去などの手間がかかったり、細胞の形態自体は分析できなかったりするという弱みがあった。

 細胞を形態に基づいて識別するには、フローサイトメトリーではなく顕微鏡画像を用いた分析を行う必要がある。細胞の画像を毎回撮影するのは、分析にAIを用いたとしても余計な時間がかかってしまう。フローサイトメトリーの処理速度と、顕微鏡画像の情報量の多さを両立する手法としての立ち位置を目指すのがゴーストサイトメトリーだ。