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形態情報を1次元に圧縮

 ゴーストサイトメトリーのベースになっているのは、「ゴーストイメージング」という1995年に報告された技術である。2次元の撮影装置ではなく、1画素の光検出器を用いて信号を計測するのが特徴だ。被写体に対して様々なパターンで光を照射することで、ある照射パターンにおける光強度という1次元の情報を得ることができる。この1次元の情報の集まり、いわば被写体画像の「ゴースト」から元の2次元の形態情報を再構成するというのが基本的な概念だ。

様々なパターンで光を細胞に照射したときの波形データをAIが解析する
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様々なパターンで光を細胞に照射したときの波形データをAIが解析する
(出所:シンクサイト)

 シンクサイトが開発したゴーストサイトメトリー技術では、細胞の形態分析にこのゴーストイメージング技術を応用する。細い経路の中を高速で流れていく細胞を様々な濃淡パターンの光で照射すると、光強度を縦軸とした時間波形信号として、細胞の形態という2次元の情報を1次元に圧縮変換できる。

 時間波形信号は、組み込まれた形態情報から2次元画像を再構成しない限り人間には理解不能なデータだ。しかし、AIで機械学習すれば時間波形信号から直接細胞の形態を分析することができるようになる。2次元画像を経由せずに2次元画像の持つ情報だけを分析するため、データ量が削減され分析にかかる時間も短縮することが可能だ。

 分析後に細胞をセルソーターに送り、分析結果に基づいて目的とする細胞とそれ以外とにリアルタイムでより分ける。ゴーストサイトメトリー技術を応用した同社の装置では、1秒間に数千個の細胞の分離が可能だという。

2023年の量産化へ最終調整

 シンクサイトが細胞分析分離システムの応用先として狙う細胞治療や創薬、診断のうち、創薬では薬効を確認する細胞実験でのスクリーニングなどに活用できる。また、診断技術の実用化に向けては血液検査機器大手のシスメックスとの連携を深めており、2021年5月1日に共同開発契約を締結している。診断の精度向上だけでなく、個別化医療への貢献も期待できるという。

 既に試作機は完成しており、目下急ぐのは装置内の再現性といったデバイスの調整だ。2021年5月19日にはスパークス・グループが運営する未来創生2号ファンドやシスメックスなど5社を引受先とする第三者割当増資で、総額28億5000万円を調達したことを発表した。調達資金を元に、技術者の採用や資材の購入を進める。また2021年8月にも米国の拠点での研究開発を始める考えで、実用化に向けてラストスパートをかける。