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 日本音楽著作権協会(JASRAC)がソニーグループと組んで、2022年にも楽曲の著作権管理にブロックチェーン技術を活用する。見据えているのは、個人単位で作詞・作曲などの創作活動にいそしむクリエーター、すなわち「草の根音楽家」の保護だ。

 オリジナルの作品を何者かが「自分がつくった」と主張し、ネット上で無断転載する――。そんなトラブルに直面した経験のある草の根音楽家は少なくないが、これまではそうした「なりすまし」に個人で対抗するのは困難だった。

(出所:123RF)
(出所:123RF)

 ブロックチェーンはそうした状況を解決し、草の根音楽家が「丸パク」への不安なくネット上で楽曲を披露できる環境づくりに貢献できるか。

DXの一環で「存在証明」を担保

 JASRACとソニーが実用化を目指しているのは、ブロックチェーンによる「存在証明」だ。実用化に先立ち2020年11月~2021年3月に実施した実証実験では、ソニーが構築した「権利処理基盤」と呼ぶシステムが存在証明の処理を担った。

 その流れはこうだ。まず草の根音楽家がWebブラウザーからJASRACの実証実験用Webサイトにアクセスし、個人IDと曲名、音源ファイルをアップロードする。権利処理基盤システムは、それらの情報に時刻証明データを付与してブロックチェーンに連なる「ブロック」化する。

 草の根音楽家が自作の楽曲を動画サイトなどで公開する際、事前に存在証明の手続きを済ませておけば、その楽曲に関する最も古い存在証明が自身に帰属すると立証できる。何者かが創作者になりすまそうとしても、具体的な証拠を基に抗弁できるわけだ。

 もともとJASRACは「はじめにブロックチェーンありき」と考えていたわけではない。きっかけは、2018年から進めているデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みの一環で、2020年度に取り組むテーマを検討するためJASRAC会員/非会員を含む草の根音楽家31人にヒアリングを実施したことだ。

 創作活動を続けるなかでどんな課題を認識しているか確認したところ、約半数が第三者によるなりすましを挙げた。JASRACは「経営課題として優先的に取り組むべきだ」と判断した。

 一方ソニーは2016年ごろから、教育分野で学位記や成績証明書をブロックチェーンで管理し学歴や成績の詐称を防ぐといった取り組みを続けている。この仕組みを楽曲の著作権管理に横展開した格好だ。