イメージセンサーにおいて、金額ベースのシェアで首位をひた走るソニー。ライバルの韓国Samsung Electronics(サムスン電子)の猛追をかわしながら、どう事業を成長させるのか。ソニーグループでイメージセンサーなどの半導体事業を手掛けるソニーセミコンダクタソリューションズの清水照士氏(同社代表取締役社長 兼 CEO)が、2021年5月27~28日開催の投資家向け説明会「IR Day 2021」と、その後6月に開催した報道機関向け説明会で事業戦略を明かした。話題は多岐に及んだため、本稿では2回に分けてその内容を掲載する。前編の今回は、主にモバイル向けイメージセンサーについて取り上げる。
19年度(20年3月末)まで、ソニーグループの半導体事業は、右肩上がりで業績を伸ばしてきた。ところが、新型コロナウイルス感染症と米中摩擦によって市場環境が変化し、イメージセンサー事業が振るわず、成長に急ブレーキがかかった。ソニーグループの半導体事業に相当する、イメージセンサーの開発・製造などを中心とした「イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)分野」の20年度通期の売上高は1兆125億円で前年同期比5%減、営業利益は1459億円で同38%減と減収減益となった。
そこで21年度以降は、その立て直しを図る。イメージセンサーの金額ベースのシェアは19年度に53%だったが、20年度は49%に低下。21年度以降はこれを回復し、25年度に60%にまで高めることを中期目標に掲げた。設備投資も強化する。これまで18~20年度の3年間で約5800億円を投じてきた。21年度から23年度までの次の3年間は、この額を上回る設備投資を行う予定。特に、21年度に投じる額が大きくなるという。21年4月の発表時点では、21年度に2850億円を投じる見込みだとしている。
前述した25年度目標を達成するため、イメージセンサーの出荷額の大半を占めるモバイル領域の立て直しと成長を図りつつ、新規領域の育成に注力する。モバイル領域では20年度、米中摩擦の影響から大口顧客だった中国の特定企業向けの売り上げが減少。ソニーは具体的な社名を明かさないが、これは中国・華為技術(ファーウェイ)を指すとみられる。
ソニーは、モバイル向けイメージセンサーを大きく2つに分類している。高画質品と多画素品である。高画質品は、画素数を抑えて各画素のサイズを大きくして、取り込める光の量を増やす。これにより、例えば暗所撮影で強みを発揮できる。多画素品は、文字通り画素数の多い写真を撮影できる他、スマートフォンの「カタログスペック」として、画素数をウリにしやすいという利点がある。
これまでソニーは、画素競争とは距離を取り、スマートフォンのハイエンド(高価格帯)品に向けた、画素数を抑えめにした高画質品に注力してきた。高画質品の主要な顧客は米Apple(アップル)とファーウェイだった。ところがファーウェイとの取引が激減した。