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 クボタが無人運転対応の田植え機を国内で初めて実用化し、2021年春の田植えシーズンを迎えて実際の田植え作業で活用され始めている。就農人口の減少や高齢化といった日本の農業が抱える構造問題に応え、将来にわたり稲作を持続可能にする味方となるか。

175万円高でも「意外に安い」

 ブランド米「つや姫」の産地として知られる山形県寒河江市。2021年の田植えが一段落した5月下旬、市内に広がる圃場の一角に集まった地元の農家たちが食い入るように見ていたのは、無人運転機能搭載の田植え機「NW8SA」による田植え作業の様子だ。

クボタの無人運転機能搭載の田植え機「NW8SA」
クボタの無人運転機能搭載の田植え機「NW8SA」
(撮影:日経クロステック)
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 「タッタッタッタッ……」。田植え機が後方の爪で苗をひとつかみずつ圃場に植え付けながら進んでいく。ありふれた田植えの風景だが、違うのは運転席に人がいないこと。そして田植え機が通過した後には、苗が横8列で寸分の狂いもなくまっすぐ整然と植わっていることだ。

 「無人の田植え機、いいですね。私も次の機械は(導入を)考えたいと思っている」――。寒河江市でブランド米「つや姫」の生産に取り組み、地元の生産者グループ「つや姫ヴィラージュ」で村長を務める土屋喜久夫氏は、クボタの無人運転田植え機による田植え作業の様子を見て顔をほころばせた。

 土屋氏が特に魅力に感じたのは、農家の作業負担軽減につながる点だ。「田植え機の運転手は楽なようでかなり疲れる。無人運転ならば運転手の負担は半分以下になると思うし、田植え機が作業しているうちに水口(みずくち)の管理などもできる。植え付けの状態もきれいだ」。

 一度に横8列分の苗を植えられる「8条植え」の田植え機の場合、無人の自動運転機能搭載機種の価格は自動運転機能非搭載の機種より175万円ほど高い。土屋氏は機能や効果を考えると「意外に安いと思った」と語る。「田植え機の償却期間は7~8年ほどと短い。それを考えればもう少し安くなってほしいと思うが、これから量産が進めば安くなっていくだろう」(土屋氏)。

 一般に田植え機ではなくトラクターの場合、無人の自動運転機能搭載機種は馬力や仕様にもよるが、自動運転機能非搭載の機種よりおおむね300万~400万円ほど高い。それに比べると今回の田植え機は無人運転機能の実装コストを抑えている。