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 その解になり得るのがハード更新である。ソフトの能力に合わせてハードも変更・追加することで、「買った後のクルマの進化」を支えるというわけだ。トヨタは過去に経験がなかったものの、「ハード更新という手法に対して社内からの反対はなかった」(川崎氏)という。

 ハード更新を実現する上で重要なのが、新しい部品を容易に取り付けられることだ。この点で苦労したのが米Tesla(テスラ)。同社は19年、先進運転支援システム(ADAS)やインフォテインメントシステムなどを制御する車載コンピューター「HW3.0」を導入した。これに合わせ、旧来の車載コンピューターを搭載する既販車も無償でHW3.0に更新できるようにした。

 「車載コンピューターを取り外すのはものすごく大変だった」。テスラ車を分解した経験を持つ自動車整備士はこう語る。まず、大型の樹脂部品であるインスツルメントパネルと助手席側のグローブボックスを取る。そして、助手席の足元から体を潜り込ませて車載コンピューターがつながる配線や固定用のねじなどを外す。車両の奥底に配置される車載コンピューターの交換は難儀だ(図3)。

図3 助手席側の奥深くに車載コンピューター
図3 助手席側の奥深くに車載コンピューター
写真はテスラの電気自動車(EV)「モデル3」を分解したときの様子。(撮影:日経Automotive)
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 一方のトヨタは、車載コンピューターとセンサーという違いはあるものの、「ディーラーで容易に後付け作業できるように、既に配線まで済ましてある」(川崎氏)。先述の樹脂カバーを外せば、LiDARを接続するコネクターが現れるという。対応時期は明らかにしていないが、ADAS機能の向上や冗長性の確保を目的に、側方2個と後方の1個を今後、無償で追加する計画である。

 LiDARの追加を機に、トヨタはOTAによるソフト更新も実施するとみられる。Advanced Drive搭載車は、OTAに対応したECU(電子制御ユニット)を4個採用した。センサーで取得した情報を高速処理して車両制御の中核を担う「ADS(Advanced Drive System)ECU」と前方カメラの情報からAI(人工知能)処理する「ADX(Advanced Drive Extension)ECU」、自車位置の推定に使う「SIS(Spatial Information Service)ECU」、そしてメーターディスプレーやHUD(ヘッド・アップ・ディスプレー)などの表示系を制御するメーターECU――である。

 トヨタの松村氏が「肝はメーターECU」と断言するように、ソフトやハードの更新で機能を追加していく上で重要になるのが、運転者とクルマが意思疎通を図るHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)の改善である(図4)。「クルマの状態や機能の進化を正しく乗員に伝えることが大事。機能の追加とセットでHMIも改良していく」(松村氏)方針だ。

図4 レクサスLSのHMI
図4 レクサスLSのHMI
メーターディスプレーとHUDを組み合わせ、周囲の状況や車両の状態などを運転者に伝える。(出所:トヨタ自動車)
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