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 トヨタ自動車が異例の対応を決めた。2021年4月に発売した高度運転支援技術「Advanced Drive(アドバンストドライブ)」を搭載する高級車「レクサスLS」とFCV(燃料電池車)「MIRAI(ミライ)」に今後、3個のLiDAR(レーザーレーダー)を後付けで無償追加する(図1)。販売後の車両の部品を更新する“ハードウエアアップデート(ハード更新)”は、トヨタとして初めての取り組みとなる。

図1 「Advanced Drive(アドバンストドライブ)」を搭載する「レクサスLS」
図1 「Advanced Drive(アドバンストドライブ)」を搭載する「レクサスLS」
前方LiDAR(レーザーレーダー)や深層学習(ディープラーニング)ベースのAI(人工知能)技術、OTA(Over The Air)によるソフトウエア更新など、新技術を多く盛り込んだ。(撮影:日経Automotive)
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 今後、他の車両にもハード更新を展開していく意向だ。Advanced Driveに次ぐ第2弾として検討しているのが、クルマを月額一定の料金で利用できるサブスクリプションサービス「KINTO(キント)」の車両である。同社は21年6月7日、ソフト更新で走行性能を高めるサービスを発表。トヨタ幹部が、ハード更新にも踏み込むと明かした。

LiDAR4個「間に合わなかった」

 「本当は後方や側方にもLiDARが欲しかった。だが、当社が求める性能のセンサーが、4月の発売のタイミングでは間に合わなかった」。Advanced Driveの開発を担当した川崎智哉氏(同社自動運転・先進安全開発部第8開発室長)は打ち明ける。トヨタはかねて、今回のレクサスLSの部分改良でLiDARを一気に4個採用する意向を示していた。蓋を開けてみれば、LiDARは前方監視用の1個だけの搭載となった。

 実際に発表となった車両には検討の痕跡が残る。外観の後方と側方に、LiDARを搭載するためのスペースが樹脂のカバーで覆われていた(図2)。

図2 発売当初はLiDAR1個に
図2 発売当初はLiDAR1個に
車両の後方と側方には、LiDARを追加するスペースを設けている。(撮影:日経Automotive)
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 開発当初の計画とは異なる形で、偶発的に実現した可能性が高いトヨタ初のハード更新。だが、同社が推進する“ソフトウエアファースト(ソフト第一)”の方針と相性は良さそうだ。

 ソフト第一とは、まずソフトのアーキテクチャーを開発し、そこに最適なハードウエアを組み合わせる考え方。OTA(Over The Air)によるソフト更新によって、新しい機能を頻繁に投入することを目指す。

 OTAによるソフト更新の課題の1つは、アルゴリズムの改良に対応できるように高性能なハードをあらかじめ盛り込む必要があること。だが、過剰なハードの搭載は車両コストを増大させるだけだ。トヨタ自動運転・先進安全開発部第8開発室グループ長の松村健氏は「数年先のソフトの進化を見越して必要十分なハードを選定するのは非常に難しい。余力の見極めが重要になる」と語る。

 OTA時代のハードはどうあるべきか――。