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 インターネットの標準として使われてきたプロトコルが置き換わるかもしれない。インターネットの通信プロトコルなどの標準化を手掛けるIETF(Internet Engineering Task Force)は2021年5月27日(米国時間)、通信プロトコル「QUIC(Quick UDP Internet Connections)」をRFC 9000として勧告した。これが長らく使われてきたTCP(Transmission Control Protocol)に取って代わる可能性があるとして関心を集めている。

 IETFが標準化したQUICは、2013年に米Google(グーグル)が発表した、大量のアクセスを高速に処理するためのプロトコル「QUIC」を発展させたものだ。グーグルのQUICはWeb専用で、UDP(User Datagram Protocol)を利用する通信プロトコルであり、独自の暗号化手法を備えていた。

 グーグルは2015年に次世代のWeb通信プロトコルとしてIETFに提出。IETFで議論を重ねた結果、TLS(Transport Layer Security)を暗号化などの基盤技術として使うこと、HTTP以外のプロトコルにも使用できるようにすることなどが盛り込まれて、今回のQUICとして標準化された。なおQUICを使った次世代のWeb通信プロトコルを「HTTP/3」と呼ぶ。

高速化のためTCPを使わない

 QUICの特徴は大きく4つ。「TCPに相当する再送制御の仕組み」「通信開始時の決まりごと(ハンドシェーク)の削減による通信の効率化」「複数の通信経路(ストリーム)の利用による通信の効率化」「TLSによる暗号化」である。

QUICの主な特徴
QUICの主な特徴
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 従来のWeb通信はTCPとTLSを使っていた。QUICはUDPを利用するため、TCPと同等の再送制御を組み込んだ。さらにTLSをQUICの一部として取り入れ、暗号化も実施する。その結果、従来はTCPとTLSでそれぞれ必要だったハンドシェークをTLSの1度だけに減らせる。

QUICはハンドシェークが1度で済む
QUICはハンドシェークが1度で済む
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 またQUICでは「ヘッドオブラインブロック」の問題を回避できる。ヘッドオブラインブロックとは、先行するパケットが届かないとき、再送が完了するまで後続するパケットを処理できないという問題である。従来のWeb通信では単一の通信経路を使っているため、先行するパケットが失われると後続するパケットを処理できない。

 一方、QUICを使った通信は複数のストリームを確立し、並行してデータをやりとりする。これによりあるストリームでエラーが発生して再送処理が必要になっても、別のストリームで並行してデータを送信できる。たとえ先行パケットにロスが発生してもパケット単位で個別に再送できるため、ヘッドオブラインブロックの問題を回避できる。