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 「フードデリバリー事業者から料理の宅配を頼まれるケースが急増した。うちは軽トラックで運ぶので運賃は割高になるが、『それでも構わない』というので引き受けている」。こう語るのは東京都内のあるトラック運送業者だ。

 ウーバーイーツに代表されるフードデリバリーサービスでは一般に、ネットを介して単発の仕事を受注する「ギグワーカー」が料理を運ぶ。だが足元では需要の拡大に配達員の確保が追いついていない。サービス品質の低下で顧客が競合他社に流れるのを防ぐため、事業者が採算を度外視してトラック運送業者に配送業務を委託しているわけだ。

 ネットを通じて外食店の料理を注文し宅配するフードデリバリー市場の顧客獲得競争が激しさを増している。老舗の出前館と2016年に始まったウーバーイーツがしのぎを削ってきたが、国内外からの新規参入も後を絶たない。一方で割引クーポンの乱発や配送コスト上昇などで早くも消耗戦の様相を呈しており、市場から撤退する企業も出てきた。乱戦模様のフードデリバリー市場はどこに向かうのか。

米料理宅配の最大手が日本上陸

 2021年6月9日、赤く大きなバッグを背負い自転車に乗った配達員が宮城県仙台市内を走り始めた。この日フードデリバリーサービスを開始したのは米フードデリバリー事業者のDoorDash(ドアダッシュ)。2013年の創業で、米フードデリバリー市場ではウーバーイーツを抑えてシェアトップに立つ。日本は米国、カナダ、オーストラリアに続く4カ国めのサービス提供地域で、アジアには初めて進出した。

 現在、日本のフードデリバリー市場では海外勢の進出が活発だ。前述のウーバーイーツのほか、2020年からはドイツ発のフードパンダや中国発のDiDiフード、フィンランド発のWolt(ウォルト)が相次ぎ参入した。

 それらのなかでドアダッシュは最後発となる。同社日本法人の山本竜馬代表兼カントリーマネージャーは「国内のフードデリバリー普及率は他国より低く、料理を配達可能なエリアもまだまだ小さい。日本全体にホワイトスペース(空白地帯)が広がっており、(後発でも)成長機会は大きい」と意気込む。

国内フードデリバリー市場参入を発表するDoorDash Japanの山本竜馬代表兼カントリーマネージャー
国内フードデリバリー市場参入を発表するDoorDash Japanの山本竜馬代表兼カントリーマネージャー
(出所:DoorDash Japan)
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 東京や大阪などの需要地ではなく仙台市でサービスを始めた理由については「人口が100万人以上で十分な市場規模があり、都会の顔と郊外の顔をバランス良く持っていることから選んだ」(同)とした。まずは地方のフードデリバリー需要を先んじて開拓し、ノウハウを蓄積しながらほかの地域に順次展開する戦略だ。