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 三井住友海上火災保険(以下、三井住友海上)が自動車損害調査でVR(仮想現実)を使った研修に取り組んでいる。2021年3月、VRやAR(拡張現実)などの技術を持つSynamon(シナモン)が提供しているVRビジネス施設の提供サービス「NEUTRANS(ニュートランス)」を使って、共同で研修コンテンツを開発した。

 2021年4月、新型コロナウイルス対策として在宅勤務などを進めている中、最初のVR研修を実施。新入社員6人が受講者として参加した。VR研修に参加するのに必要なヘッドマウントディスプレー(HMD)は、受講者が申告していた場所に社内便で事前に配送。受講者は社員寮の部屋や⾃宅に最も近い拠点から、講師役の社員は東京・神田駿河台にある本店からそれぞれ参加した。

三井住友海上火災保険が社内で実施している自動車損害調査に関するVR研修の様子
三井住友海上火災保険が社内で実施している自動車損害調査に関するVR研修の様子
(出所:三井住友海上火災保険)
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受講者から「眠くならず集中できる」の声も

 研修では調査を進める上で必要な自動車の部品の名称を教えたり、自動車の構造について解説したりした。調査の仕方の他、事故によって車の損傷や損害が変わることや、損傷した自動車をどう修理していくのかといった実践的な内容も盛り込んだ。

 受講者からは「眠くならず集中して受講できた」といった反応が得られたという。講師を務めた阿部光弘損害サポート業務部技術支援チーム技術部長は「研修は1時間程度の予定だったが、受講者との間で対話が弾み、1時間20分ほどに延びてしまった。それでも苦にならず楽しみながら学んでもらえた。時間を忘れて受講できるようだ」と振り返る。

 阿部技術部長によると、講師もHMDを装着して参加することもあり、手元に紙の研修テキストを置いて研修を進めるのが難しく、研修の段取りなどを事前に把握しておく準備が必要だったという。一方で、VR空間で受講者に説明していくうちに、「これはポイントとなる話なので説明しよう」といった気付きを得ることが多かった。

 気付きを得る機会が多かったのは、VR空間に特有の没入感が高まったり、実際の事故車両を忠実に再現した3次元CGをVR空間内に配置したりしていたことが大きい。「受講者もVR空間を自由に動けるので、学ぶ意欲が高まるようだ」と阿部技術部長はみている。

Web会議よりも相手がそばにいる感覚を持てる

 VR研修を手掛けている栗山義規損害サポート業務部ナレッジチームチーム長によると、Web会議サービスによる研修の場合、相手の顔は見えるものの、遠くにいる人と話している感覚を持ちがちだという。

 一方、VR研修については「VR空間に入りアバターを介してコミュニケーションを取ると、話し相手が実際にそばにいる感覚や、仲間同士で会話や議論をしている感覚を持つことができる。コロナ禍で人と会うことが難しいということもあり、受講者のモチベーション向上にもつながっているようだった」と栗山チーム長は振り返る。

 阿部技術部長によると、VR研修の終了後、実際に受講者と直接会う機会があったという。「VR空間のアバターを通じたコミュニケーションをしていたことで、受講者との心理的な距離感はかなり縮まった」と振り返る。阿部技術部長は入社30年以上のベテラン社員だが、阿部技術部長の同僚は、新入社員が阿部技術部長と友達のような感じで話しているのを見て、驚いていたという。