コードを全く書かず、アイコンの操作などでアプリケーションを開発できる「ノーコード開発」。ここに来て同分野のツールを使った研修が相次いでいる。提供各社の共通する狙いは、非IT人材をDX(デジタルトランスフォーメーション)に役立つ人材に育てることだ。
アプリ実装を通してDX時代の「思考法」学ぶ
プログラミング学習サービスの「TechAcademy(テックアカデミー)」を運営するキラメックス(東京・渋谷)は2021年6月から米Google(グーグル)のノーコード開発ツール「AppSheet(アップシート)」を使ったオンライン研修サービスの提供を始めた。対象は企業でDX推進業務を担う非IT人材。アプリケーションの実装を通してデジタル技術を活用した新事業や業務改善に生かせる考え方や仕事の進め方といった、「思考法」を身に付けられるようにして、研修後にDX人材として活躍してもらう狙いがある。
特徴は、受講者1人ひとりに「メンター」がつき、受講者がアプリ開発に関する質問や相談をいつでもできるようにする点にある。受講者はキラメックスが制作した研修テキストに沿ってAppSheetでアプリを作成し、メンターに提出。メンターはアプリを正しく実装できるまで、受講者を指導する。研修でつくるアプリは「業務マニュアルの作成」や「備品の管理」といった業務改善につながりやすいものとする。
「企業では現在、開発の内製化で業務の効率を高めたり事業を改革したりしたいというニーズが高まっている。結果、日常の仕事でもITの知識を必要とする人が増えた」。ノーコード開発ツールを使う研修サービスを提供する背景について、キラメックスの樋口隆広社長はこう説明する。同社は2012年からプログラミング研修サービスを提供し、当初はITベンダーの社員が受講者の中心だったが、「近年はユーザー企業の社員が増えている」(樋口社長)。
今回の新しい研修サービスの立ち上げに関わった同社の中桐規彰氏は「利用部門の社員がDX推進に必要なスキルを身につけるうえでは、プログラミングのスキルは必ずしも必要ではない」とする。ノーコードでの開発経験を通して、業務改善に適したツールの見極め方や使い方などを学ぶことが必要というわけだ。「非IT社員がノーコード開発ツールでアプリを開発することで、アプリ開発の流れや勘所を理解でき、エンジニアとのコミュニケーションがより円滑になる」(中桐氏)。