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 「開発・サービス(を提供する側の)目線から利用者のデータを取り扱い、利用者目線が欠如している」――。

 LINE社が海外拠点でLINEアプリ利用者の個人情報を扱っていた問題について調査を進めている特別委員会は2021年6月11日、一次報告書を公開するとともにオンラインで記者会見を開いた。冒頭の発言は同委員会で座長を務める東京大学大学院法学政治学研究科の宍戸常寿教授が会見で繰り返し述べたものだ。LINE問題の「元凶」を指摘したとも言える。

一次報告書について説明する特別委員会の宍戸常寿座長(東京大学大学院法学政治学研究科教授、左)と技術検証部会の川口洋座長(川口設計代表取締役)
一次報告書について説明する特別委員会の宍戸常寿座長(東京大学大学院法学政治学研究科教授、左)と技術検証部会の川口洋座長(川口設計代表取締役)
(出所:Zoom画面のキャプチャー)
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 宍戸教授など外部有識者から成る「グローバルなデータガバナンスに関する特別委員会」はLINE問題を受けてZホールディングス(ZHD)が設置したもので、その目的は2つある。「セキュリティーやガバナンスの観点からLINE社におけるこれまでの個人データの取り扱いについて検証・評価すること」と、「検証結果を踏まえてLINE社のデータガバナンスの在り方を提言すること」である。

 同委員会は一次報告書において、LINEアプリの個人情報が中国企業からアクセス可能だった問題と、LINEアプリの画像や動画、ファイルなどが韓国にあるサーバーに保管されていた問題、LINEアプリを利用する政府機関や自治体に対してデータ保管について実態と異なる説明をした問題などを取り上げた。さらにLINE社へのヒアリングや同社提供の資料などに基づいて検証した結果も報告した。

「これまでと違う話が急に出てきて驚いた」

 同委員会で最も問題視したのが、「完全国内移転」の公表スケジュールだ。LINE社は問題判明後の2021年3月に、遅くとも2022年6月までに韓国サーバーに保管していたデータを日本国内に完全移転するとしていた。

 ところが、同委員会で技術面からの検証を担当する技術検証部会がLINE社にヒアリングをするなかで、LINE社の公表スケジュールに不備があると明らかになった。LINE社はLINEアプリの「アルバム」機能に保存したデータ、アプリに投稿したメッセージや写真をメモのように保存できる「Keep(キープ)」機能に保存したデータの移転時期については、公表スケジュールに含めておらず、その移転時期は2024年前半を計画していた。

 「これまでと違う話が急に出てきて驚いた。2024年までかかるなら利用者にそのスケジュールを説明すべきだった」。技術検証部会の座長を務める川口設計(東京・千代田)の川口洋代表取締役は記者会見でこう振り返った。

 同委員会はLINE社の対応について「厳しく追及した」(宍戸教授)。だが、「積極的に隠そうとしたというよりは、開発やサービス(の提供)側の目線で考えており、(公表スケジュールが十分でなかったのは)ユーザーファースト目線の欠如があったためではないか」(宍戸教授)との認識に至ったという。