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 個人情報保護委員会はデジタル改革関連法の成立によって、2023年度から企業に加えて行政機関や自治体などに対して個人情報の保護について監視・監督する権限を持つ。デジタル庁の発足などに合わせてどんな役割を担うのか。丹野美絵子委員長に聞いた。

(聞き手=大豆生田 崇志、長倉 克枝)

2021年5月にデジタル改革関連法に束ねて成立した「令和3年改正個人情報保護法」によって、個人情報保護委員会は企業に加えて行政機関や自治体などに対して個人情報の保護への監視・監督の権限を持ちます。どんな組織を目指していますか。

 個人情報保護委員会は新しいステージに踏み出すことになります。これまで以上に独立した専門的な見地から広く深く、責務を果たす必要があると思っています。

 委員会は個人情報保護法の学識経験者だけでなく、消費者保護やIT、行政分野の専門家、さらには企業実務に詳しいオールラウンドの人たちが集まっています。「個人情報の有用性に配慮しつつ個人の権利利益を保護するために個人情報の適正な取り扱いを図る」というのが委員会の使命です。

丹野 美絵子(たんの・みえこ)氏
丹野 美絵子(たんの・みえこ)氏
個人情報保護委員会委員長。1971年北海道大学法学部卒業。1990年に東京都消費生活総合センター消費生活相談員となり、2011年から全国消費生活相談員協会理事長、2013年に国民生活センター理事となり、2016年に個人情報保護委員会委員就任。2019年11月から現職。(撮影:品田 裕美)
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 2015年の法改正によって委員会は省庁の縦割りを廃止して独立した監督機関として民間事業者の個人情報の取り扱いを監視・監督しています。デジタル社会やグローバル社会が進む中で、社会の変化や国際的な制度の潮流を踏まえて個人情報が適正に取り扱われて国民の安心・安全を確保する必要があります。

 個人情報保護という観点で行政機関や自治体なども一元的に監視・監督する権限を持つ意義は、消費者の目線からも大きいと思います。絶えず時代の変化に応じた見直しに真摯に取り組み、委員会に寄せられる消費者や事業者の信頼と負託に応えていくようしっかり取り組みたいと考えています。

個人情報保護委員会の役割はまだ十分周知できていない実態もありそうです。公正取引委員会と同じく大臣らの指揮や監督を受けず独立して権限を行使できるのに「政府の個人情報保護委員会」と説明する報道もあり、違和感があります。

 それはよく分かります。ただ、最近はそうした形容詞がない記事も散見されます。まずは個人情報保護法に基づいて粛々と法執行をしたり、それを踏まえた法改正などを行ったりして注目してもらうことが、ある意味地味なのかもしれないが私どもを知ってもらう最初のきっかけなのかなと思います。

 実は委員会は様々な方から意見をもらっています。例えば委員会は「個人情報保護法相談ダイヤル」で、事業者や消費者から年間1万5000件ほど個人情報の取り扱いに関する苦情や相談を受け付けています。

 個人情報保護法には3年ごとに見直して法改正する規定があります。2020年に国会で成立した「3年ごと見直し規定」による初めての法改正(令和2年改正)は、相談ダイヤルに寄せられた法の施行状況や事業者との様々な話し合い、有識者へのヒアリングといった幅広い意見を踏まえています。

 実際に法改正の端緒の1つになった事例もあります。特に個人が自らのデータの利用停止や消去などを請求できる権利を拡充しました。正当な理由があれば消費者が一番簡単で使える条項なので活用してほしいと思います。