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LINEなど個人情報の問題を巡る報道も相次いでいます。

 法改正の端緒になるのは、まずは全国の様々な事業者や個人から寄せられる漏洩報告です。相談ダイヤルや報道を端緒に私どもが調査して、必要に応じて監視・監督につなげています。

 最近の主な例を2つほど申し上げると、2019年8月と12月にリクルートキャリアなどに勧告した事案がありました。同社は学生が登録した個人情報などから内定を辞退する確率を算出して、本人の同意を得ずに契約した第三者に提供していたため、同意を求めて適正に取り扱う体制を整備するよう勧告しました。

 もう1つは破産者情報の事例です。官報の電子公告に載せられた破産者の情報を集めて違法にデータ化してWebサイト上に載せていて、電話相談ダイヤルにたくさんの苦情が寄せられました。

 官報が破産者の情報を掲載しているのは本来、債権者保護のためです。多くの公衆に名前をさらすというような目的ではありませんので、個人の権利が侵害された事案です。官報に掲載された破産者らの個人情報を取得する際に利用目的の通知・公表をせずに個人情報をデータベース化した上、第三者提供への同意を得ないまま掲載していました。

 掲載したWebサイトの運営者の氏名や法人名称は判明せず、かつ所在不明だったため、2020年7月に民法の公示送達という方法でサイト運営者に勧告と命令を行いました。委員会として初めての命令でしたが、期限までにサイトは閉鎖されました。

(撮影:品田裕美)
(撮影:品田裕美)
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 これまで委員会が非常に注力してきた分野は2つあります。1つは個人情報の取り扱いに関して寄せられる相談や情報を生かした機動的かつ効果的な法執行。もう1つは相談窓口や広報の充実です。多くの方に我々の存在を知ってもらって、個人情報保護法の趣旨を理解してもらうことが極めて重要だと考えています。

一連の事案を通じて個人情報委員会の役割への理解が広まるでしょうか。

 もちろん今後このようなことが起きてほしいわけでは決してありませんが、もしかすると我々の想定を超えたような事案が起きるかもしれません。必要であれば法的手当てを考えることになります。

 そういう意味で、この取り組みに終わりはなく日々進化していくものでしょう。そのときやはり大事なのは、社会の変化や国際的な制度の潮流を踏まえつつ絶えず時代の変化に応じて制度を見直すことです。

令和3年改正の国会審議で野党から、委員会は企業に対して立ち入り検査や命令が可能なのに、行政機関などには罰則のない実地調査や勧告までしか権限がないといった疑問も多く出ました。

 個人情報を扱う事業者が立ち入り検査などを拒んだ場合は罰則が科せられますが、行政機関などへの実地調査には罰則がないだけで実質全く同じです。私どもが勧告した内容に対して行政機関がスルーするというのは考えにくいと承知しているので、実質的に事業者への権限行使と何ら劣るものではないと思っています。

委員会の2021年度末定員は148人ですが、官民への監視・監督権限の一元化によって体制強化が不可避になりそうです。

 委員会の所掌事務や権限が大幅に拡大されるのは事実で、具体的な人員の規模感や強化策は今後、鋭意検討します。委員会がこれまで蓄積してきたノウハウを活用して、官民双方から多様な人材の確保に努めながら質と量の両面で必要な組織を十二分に強化する必要があると考えています。